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★ [ACG05-11] 地理観測用衛星データ操作ソフト「Geo-Sim」の開発
キーワード:ALOS, AVNIR-2, PRISM/DSM, DEM, Geo-Sim
地理観測用衛星データ操作ソフト「Geo-Sim」の開発1.衛星データの多機能化 地球観測衛星によって取得されたデータは、土地利用や災害監視など幅広い分野で活用されている。特に過去10年ほどの間に、搭載される各種センサやレーダーが高性能化し、取得される衛星データの解像度は急速に向上した。とくに我が国の陸域観測技術衛星ALOS(Advanced Land Observing Satellite:通称「だいち」)は、地表面の凹凸を高い精度で観測できるセンサPRISMを搭載し、DSM(Digital Surface Model)データの取得を可能にした。こうした先進的なセンサによって取得されるデータを活用することにより、2次元の平面で扱うことが一般的であった衛星データを、立体的な3次元のデータとすることが可能になる。衛星データを3次元として扱うことは、利活用範囲の拡大を意味し、これまでにない多機能化が期待できる。2. 「Geo-Sim」の開発衛星データはGB単位になることが珍しくはなく、市販のコンピュータによる3次元化は負荷が大きかった。しかし近年、コンピュータの高性能化と低価格化により、その障壁は低くなった。そこで我々は、ALOSデータをはじめとする各種衛星データを、市販のコンピュータ上で3次元表示できるViewerを開発した。これにより一般の人々でも、マウス等の操作により立体的な地形を自在な角度から観察したり、地盤を傾斜させたり、さらには海水準を変動させるなどして海岸線の変化を確認することが可能になった(図1.)。図1. iPadによるGeo-Sim の操作さらにGPSと連動したiPad上に3次元衛星データを表示し、通信環境のないエリアでも使用可能な「Geo-Sim」を開発した。これにより、土石流の発生状況、あるいは古代の海岸線などをCGによって再現し、かつ現場における照合作業が可能になる。3. ALOS-2の打ち上げ陸域観測衛星ALOS(「だいち」)は、東日本大震災発生直後に被災地周辺を集中的に観測した後、電力異常により運用停止となった。2014年春に打ち上げ予定の後継機ALOS-2は、ALOSとは異なり搭載される機能は合成開口レーダーに限定される。しかし解像度は極めて高くなるため、土石流発生箇所の観測精度は向上することが期待できる。また、水面の波による反射から、風の影響を可視化することも期待される。4. 今後の計画「Geo-Sim」は、3DCGによる古代景観の再現を表示するなど主として観光用を目的としたソフトウェアとして、民間企業により実用化に向けた計画が最終段階に入っている。我々は、これまで蓄積してきた技術をもとに、海底地形データと、衛星による陸域のデータを融合し、海水準の上昇だけではなく降下も含めた、さまざまなシミュレーションに対応する、新たなソフトウェア「地理学シミュレータ」の開発に取り組む予定である。