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[ACG06-32] GCOM-C1陸面反射率プロダクトの開発
キーワード:GCOM-C1, SGLI, 陸面反射率, 大気補正
陸面反射率(RSRF)プロダクトは植生や被覆分類等の陸域の高次アルゴリズムの入力になると共に放射収支におけるアルベードや大気推定のバックグラウンドとなる情報でもあり、GCOM-C1/SGLI(2016年度打ち上げ予定)の要となるプロダクトである。RSRFの推定は、晴天域において衛星による大気上端輝度データから大気分子とエアロゾルの散乱・吸収を補正して地表面からの光を分離(大気補正)することで行われる。しかし、大気上端輝度からエアロゾルの情報を抽出するためには背景となる陸面の情報を差し引く必要があり、結局両者を同時推定することが必要となってしまう。この推定においては、エアロゾルやRSRFの波長特性についての経験的な仮定や候補モデルを拘束条件としてしばしば用いられる。ただしこの場合、求めたい量を拘束条件にしてしまう恐れもあるので多様な波長特性の知見を蓄積して適切な選択を行う必要がある。RSRFを先見値とする場合、衛星観測は特定の方向からの観測になるため、RSRFの観測太陽・衛星幾何条件による変化(BRDF)もモデル化する必要がある。大気補正におけるエアロゾル候補モデル(粒径・高度分布、屈折率等)の設定は、エアロゾル推定を目的とするアルゴリズム(候補モデルを選択するような一般的なエアロゾル推定アルゴリズムの場合)における候補モデルとも整合性を持たせられる可能性がある。特にエアロゾル推定時のバックグラウンドとしてRSRFを使うこともあり、アルゴリズム間の整合性が取れれば誤差評価や精度向上などにおいてメリットがあると考えられる。GCOM-C1サイエンスチームにはSKYNETやAERONET等の地上観測を用いたエアロゾル特性やその地域性の知見の蓄積、植生等の陸面分光反射率やその方向性の観測やモデル化(キャノピー放射伝達)を行っているグループがある。2012年の夏にミニワークショップを開催し、それらの知見をJAXAが集約しながら段階的に取り込んで陸面大気補正アルゴリズムを開発していくという方針を決めている。その際にはRSRFやBRDFを利用する被覆やLAIやアルベードなどの下流のアルゴリズムとの整合性(大気補正時の拘束条件を下流で利用することにならないようにすること)の考慮の必要性も確認された。GCOM-C1打ち上げ時に向けた開発としては、既存の知見を基にアルゴリズムを開発する予定である。RSRF推定の対象とするSGLIの波長はあまり強い吸収はないものの、その弱い吸収について水蒸気、オゾン、酸素、NO2等の吸収補正を行う。また、標高については、海面気圧と高分解能の高度データ(ASTER GDEM-2とGTOPO1を併用)を用いて標高補正を行う。地表面の勾配の影響については地表面の法線を高度データから推定しておき太陽入射角から近似的に斜面補正を行う予定である。GCOM-C1/SGLIの特長として380nmの近紫外波長バンドを持っている。RSRFの事前推定には、一般に反射率が小さくBRFの変化も小さい近紫外や青波長域で陸面反射率を拘束し、その波長の大気散乱光を抽出することで大気補正することを計画している。しかし近紫外~青バンドのRSRFの推定のためには地表面の状態(植生や被覆)の推定が必要であり、そのためにエアロゾルの影響を受けにくい長波長域(NIRやSWIR)のデータや、(RSRFの時間変動は大気より小さいと仮定して)近い過去の推定値を用いることを計画している。GCOM-C1打ち上げ後の将来のアルゴリズムとしては、LAI開発におけるキャノピー放射伝達研究の知見を入れて土地被覆や植生の季節フェーズを考慮した拘束条件を用いるように改善したり、新たなエアロゾル推定手法やエアロゾル輸送モデルの予測値を用いることなどが期待される。GCOM-C1/SGLIには斜め方向から赤とNIR波長で観測を行う偏光センサを搭載している。陸面BRDFや地表面偏光等の知見が蓄積されれば、将来的にはこれも用いて大気補正の精度を改善できる可能性がある。