18:15 〜 19:30
[ACG06-P02] 静止気象衛星を用いた降雨域推定マップの作成とGSMaP
キーワード:マイクロ波放射計, 衛星全球降水マップ, 静止気象衛星, 降水レーダー, 高時間分解能, 中高緯度
GSMaPは広域・高時間分解能の降水観測データの需要に応えるために複数台の衛星に搭載されたマイクロ波放射計の輝度温度観測から全球の降水量を推定している。さらにマイクロ波放射計搭載衛星の観測がない場所や時間帯では、静止気象衛星の赤外観測から雲の移動ベクトルを計算し、前後の時間のマイクロ波観測で得た降雨域の移動先を推定することで1時間毎という高時間分解能の降水観測を可能にしている(GSMaP_MVK, GSMaP_NRT; v5.222.1)。しかしこの手法では短時間に発生する対流性降水を見逃す危険性が指摘されており(Ushio et al. 2009)、また雲の移動ベクトルの推定には静止気象衛星の赤外1チャンネル(IR1)のみしか用いられていない。そこで本研究では静止気象衛星のマルチチャンネルを用いてより精度の高い降雨域推定マップ(降雨域ポテンシャルマップ)を作成し、ポテンシャルマップを用いてGSMaP_MVK・NRTの降雨域を修正することでどの程度精度の向上が見込めるのかを検証した。
静止気象衛星から降雨域を推定する指標はMTSAT-1Rが観測する10.5~11.5μmのIR1と6.5~7μmの水蒸気チャンネル(WV)の差分を用いた。これはIR1とWVの輝度温度差が小さい場所は降雨を伴う深い対流雲の存在する確率が高いというOhsawa et al.(2001)の結果に基づいており、またIR1とWVはほとんどの静止気象衛星に搭載されているため広範囲・長期観測が容易である。降雨域の真値として熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダー(PR; 2A25, V7)の地上降水強度と気象庁全国合成レーダーの換算降水強度を用い、MTSAT-1Rとの同時観測から輝度温度を降雨確率に変換することでポテンシャルマップを作成した。
最初にGSMaPの降雨域とレーダー観測から得られた降雨域を比較した結果、海上のマイクロ波放射計搭載衛星が使えない場所でGSMaP_MVKが降雨域を過大評価しているという結果が得られた。そこでGSMaPの降水量とポテンシャルマップの降雨確率が一定の閾値以下の場所を晴れと判定し直した結果、海上のGSMaP_MVKの降雨域推定精度が向上するという結果が得られた。パラメタスウィープの結果最も精度がよいのはGSMaPの降水量が1.0mm/hr以下かつポテンシャルマップの降雨確率が15%以下を閾値に設定した時で、降雨域推定のスレットスコア(TS)が0.37から0.41まで向上しマイクロ波放射計搭載衛星が利用可能な場合のTSの値である0.45に近づいた。また一方でマイクロ波搭載衛星が使えない陸域・海岸域においてGSMaP_NRTが降雨域を過小評価しているという結果が得られたため、作成したポテンシャルマップの降雨確率が40%以上の場所を降雨域と判定し直してGSMaPの降雨域に加えた結果、陸域・海岸域のGSMaP_NRTのTSが0.27から0.34まで向上するという結果が得られた。
これらの結果から、マイクロ波放射計搭載衛星が使えない場所では静止気象衛星マルチチャンネルを用いた降雨域ポテンシャルマップを利用することでGSMaPの降雨域推定精度の向上が期待される。
静止気象衛星から降雨域を推定する指標はMTSAT-1Rが観測する10.5~11.5μmのIR1と6.5~7μmの水蒸気チャンネル(WV)の差分を用いた。これはIR1とWVの輝度温度差が小さい場所は降雨を伴う深い対流雲の存在する確率が高いというOhsawa et al.(2001)の結果に基づいており、またIR1とWVはほとんどの静止気象衛星に搭載されているため広範囲・長期観測が容易である。降雨域の真値として熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダー(PR; 2A25, V7)の地上降水強度と気象庁全国合成レーダーの換算降水強度を用い、MTSAT-1Rとの同時観測から輝度温度を降雨確率に変換することでポテンシャルマップを作成した。
最初にGSMaPの降雨域とレーダー観測から得られた降雨域を比較した結果、海上のマイクロ波放射計搭載衛星が使えない場所でGSMaP_MVKが降雨域を過大評価しているという結果が得られた。そこでGSMaPの降水量とポテンシャルマップの降雨確率が一定の閾値以下の場所を晴れと判定し直した結果、海上のGSMaP_MVKの降雨域推定精度が向上するという結果が得られた。パラメタスウィープの結果最も精度がよいのはGSMaPの降水量が1.0mm/hr以下かつポテンシャルマップの降雨確率が15%以下を閾値に設定した時で、降雨域推定のスレットスコア(TS)が0.37から0.41まで向上しマイクロ波放射計搭載衛星が利用可能な場合のTSの値である0.45に近づいた。また一方でマイクロ波搭載衛星が使えない陸域・海岸域においてGSMaP_NRTが降雨域を過小評価しているという結果が得られたため、作成したポテンシャルマップの降雨確率が40%以上の場所を降雨域と判定し直してGSMaPの降雨域に加えた結果、陸域・海岸域のGSMaP_NRTのTSが0.27から0.34まで向上するという結果が得られた。
これらの結果から、マイクロ波放射計搭載衛星が使えない場所では静止気象衛星マルチチャンネルを用いた降雨域ポテンシャルマップを利用することでGSMaPの降雨域推定精度の向上が期待される。