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[ACG33-02] 偽高山帯におけるオオシラビソ小林分は分布を拡大しているか?―秋田駒ヶ岳を例として―
キーワード:オオシラビソ林, 偽高山帯, 分布拡大, 土壌水分
東日本の日本海側山地には亜高山帯に針葉樹林帯が欠落し、代わりにササや灌木が成立する偽高山帯が広がっている。これは多雪な環境による雪圧害のために、針葉樹帯が成立できないことが要因のひとつであると考えられている。しかし、日本海側山地よりも積雪の少ない奥羽山脈の一部にも偽高山帯を持つ山域が存在する。その一つの秋田駒ヶ岳には、偽高山帯景観が広がる中に亜高山帯針葉樹のオオシラビソ(Abies mariesii)が小林分で点在している。奥羽山脈における偽高山帯景観は、花粉分析の研究からオオシラビソ林が分布拡大の途上にある景観と考えられてきた。しかし、この点についてはこれまで現地調査における検討がなされてこなかった。よって本研究は、秋田駒ヶ岳笹森山に分布するオオシラビソの小林分を対象に、樹木の分布と立地環境について調査を行い、林分が分布を拡大しているかどうかの検討を行った。調査の結果、オオシラビソ小林分の周囲のササやブナ林内には、オオシラビソの実生が全く確認できなかった。林分内と林分外で土壌条件を比較すると、林分内の方がより湿潤な環境であった。すなわち、秋田駒ヶ岳に広がる偽高山帯景観は、オオシラビソ林の分布拡大途上の景観ではなく、限られた湿潤な環境のもとにオオシラビソ林が分布することによって成立した景観だと考えられる。