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[ACG33-09] 地域産材の樹種別需要量に基づく木造住宅のHWPとしてのCO2貯蔵量のパラメトリック推計
キーワード:京都議定書, HWP, 木造住宅, 炭素ストック, 国産材
京都議定書における木材の取り扱いについて、第1約束期間では立木が林地から伐採された時点で成長段階において蓄積した炭素を即時に大気中に放出するとされていた。第2約束期間では林地からの伐採後に木材製品(以下、HWP)として利用されている間は炭素を固定し、廃棄される段階で放出とみなすことになる。国産木材の利用先としては国内で建築される木造住宅は主要であり、HWPの炭素プールとしても重要な役割を持っている。しかしながら国産材の利用率は低下し続けている。今後の国産材利用率増加を計る方策をより具体的なものにするためには樹種毎の現状利用量や、将来の利用増加見込み量の推計を行っていくことが重要である。既往の研究では全国を対象としたHWPによる炭素プールの将来推計が行われている。全国を推計範囲とした、広範囲を一括りに見た推計では、全国の総延べ床面積、年間新築数、世帯数、m3あたりの平均木材使用量を基礎データとしており樹種毎の推計には至っていない。よって、樹種毎の利用増加目標量の推計を行うために地域ごとの部材別使用樹種量や樹種毎の炭素ストック量(以下、カーボンバランス)を用いることにより、地域毎の特性を取り入れた算出フローを作成することが喫緊の課題である。本研究では木材統計に適応可能でいずれの都道府県にも適用可能である、樹種別利用量及び炭素ストック量の推計方法を検討した。既往の研究において山形らが明らかにした長野県内の樹種別カーボンバランスと長野県の調査で明らかにされた樹種別木材利用率を用いて、長野県を対象に樹種別利用量及び炭素ストック量の推計を行った。推計の結果、2021年(平成33年)の380,000[t-C]をピークに炭素ストック量は減少していくという結果が得られた。2021年まで、一戸当たりの平均延べ床面積の増加に依る長野県全域の総延べ床面積の増加から、炭素ストック量は増加傾向を示した。しかしながら2022年以降、年間新築戸数の減少と既存住宅の滅失戸数の増加から炭素ストック量は減少に転じた。本研究では、炭素ストック量の減少への対策として林野庁の掲げている国産材利用率6割が達成された場合の推計を行った。2011(平成23年)年以降の国産材利用率を6割に変更した結果、2038年(平成50年)まで減少は見られなかった。国産材利用率6割を達成するためには国産材供給量を年間約50,000m3増加させる必要があることが推計から明らかになった。長野県内における森林蓄積資源量は十分であるため、供給能力を確保する必要がある。井戸らは既往の研究にて、需要量の見込みが立てられないため林地からの伐採量の調整が困難であることを指摘している。これに対して本研究の推計が非常に有用であり、供給側に推計結果をフィードバックすることで国産材の流通量を増やす一助となる。都道府県間での国産材の流通が行われていることから、他の都道府県においても本研究の推計を行う必要がある。今後、それぞれの需要量見込みを得ることで国内全体の木材流通を把握、計画して国産材利用率を挙げていくロードマップを作成することが重要である。