日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG34_1PM2] 統合的な陸域生態系-水文-大気プロセス研究

2014年5月1日(木) 16:15 〜 17:00 213 (2F)

コンビーナ:*佐藤 永(名古屋大学大学院 環境学研究科)、伊勢 武史(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)、熊谷 朝臣(名古屋大学地球水循環研究センター)、座長:佐藤 永(名古屋大学大学院 環境学研究科)

16:15 〜 16:30

[ACG34-06] 北極陸域変動モデル相互比較プロジェクトの概要

*宮崎 真1斉藤 和之2山崎 剛3伊勢 武史4森 淳子1荒木田 葉月5羽島 知洋2保坂 征宏6飯島 慈裕2伊藤 昭彦7松浦 陽次郎8庭野 匡思6大石 龍太1太田 岳史9朴 昊澤2佐藤 篤司10末吉 哲雄2杉本 敦子11鈴木 力英2山口 悟10芳村 圭12 (1.国立極地研究所、2.海洋研究開発機構、3.兵庫県立大学、4.東北大学、5.理化学研究所、6.気象研究所、7.国立環境研究所、8.森林総合研究所、9.名古屋大学、10.防災科学技術研究所、11.北海道大学、12.東京大学)

キーワード:北極, 陸域モデル, 積雪, 永久凍土

1.はじめに2011年度から文部科学省の「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)事業北極気候変動分野「急変する北極気候システム及びその全球的な影響の総合的解明 (GRENE Arctic Climate Change Research Project (GRENE-ACCRP)」が開始された。同事業の研究課題「環北極陸域システムの変動と気候への影響 (GRENE Terrestrial Ecosystem in Arctic: GRENE-TEA)」は、気候システムにおける北極陸域システムの役割と機能を明らかにして、全球の気候への北極域の変化の影響を評価する事を目的としている。GRENE-TEAのモデリンググループは、大気海洋結合全球気候モデル(CGCMs)の既存の陸域スキームを含む北極陸域変動モデルにおける物理・生態過程の改良と、次世代の北極陸域モデル開発の基礎を据えることを目標としている。その一環として、北極陸域における観測値(stage 1)やモデル出力値(stage 2)を用いたモデルの相互比較となる「北極陸域モデル相互比較プロジェクト(GTMIP)」を行う。そこでは、幅広い視野でモデルの較正、検証、改良と開発をより効果的に行えるようにするために、現場観測研究者、リモートセンシング観測研究者とモデル研究者間で観測データや情報を変換する為に必要な情報交換を促進する。 2.GTMIPで使用するデータと参加モデル2.1 データStage 1はモデル間およびサイト間の比較を目的とし、既存ならびにGRENE-TEAで展開する観測サイトの観測値を主体として陸域モデルへの入力データおよび検証データを作成する。観測値には欠測値や、モデル入力として必要であるが観測されていない項目があるため、そのままではモデル入力データとして十分でない。そのため、再解析データ (NCEP/NCARなど)とグローバルな観測ベースのデータ(CRU)を用いて、モデル入力用の連続データをVer. 0として4地点(アラスカ・フェアバンクス、ロシア・ヤクーツク、ティクシ、チョクルダ、フィンランド・ケボ)で作成した。各観測サイトでの観測値をこのVer. 0データに埋め込むことにより、各サイトの実情を反映した入力データVer.1が作成される.Ver. 1データはフェアバンクスにおいて作成済みで、他地点も順次作成予定である。これらのモデル入力用のデータは極地研のArctic Data Archive System (https://ads.nipr.ac.jp/index.html)にて公開予定である。2.2 参加モデルGTMIP参加モデルは、陸面過程モデル(MATSIRO、 2LM、 CHANGE、 HAL)、物質循環モデル(VISIT)、陸域生態モデル(STEM-NOAHbgc)、動的生態系モデル(SEIB-DGVM)、領域気候モデル(WRF)、1次元物理積雪モデル(SNOWPACK)、積雪モデル(SMAP)、凍土モデル(FROST)である。参加モデルのうちCGCMsやRCM(領域気候モデル)との結合が可能なモデルは全体の70%を占めている。対象とする空間スケールはサイトレベルから全球までわたっている。3.結果3.1 Ver.0データと観測値の比較Ver.0データ(65.713°N, 148.125°W)とフェアバンクス近郊の2地点(Poker Flat Research Range: PFRR、 65.123°N、 147.487°W、 Caribou Peak: CP、 65.189°N、 147.500°W)の観測値との比較を行った.日平均気温はVer.0とPFRRの値がほぼ同じであったが、日最高・日最低気温の幅がVer.0の方がPFRRに比べて小さかった。年降水量はVer.0 (238.2mm)とPFRR(247.0mm)はほぼ同じであったが、CP(353.5mm)は前者より大きかった。3.2 Ver.0データによるモデル出力Ver.0データをGTMIP参加モデルに入力した結果の例をいくつか示す。2011年の地温のPFRRにおける観測結果とモデルによる計算結果(CHANGE、凍土改良版MATSIRO(MATSIRO-r)、PB-SDM)は、冬季にモデルによる計算値の方が観測値に比べて低めの傾向がどのモデルにおいても見られた。1988年~2011年の積雪深と活動層の厚さのCHANGE、MATSIRO-rとPFRRの観測値の2011年の積雪深は、モデルが観測値の半分程度の積雪深であった。2LMによる熱フラックスの主要な項が顕熱と潜熱フラックスが6月頃に入れ替わった。CHANGEによるCO2フラックスの季節変化では、夏季に吸収が見られ、年々変動はGPPに増加傾向がみられた。SEIB-DGVMの2000年ランのGPP、木本バイオマス、草本バイオマス、土壌有機物は、オリジナルMATSIROでは小さかったが、MATSIRO-rは気温=地温と仮定したのと同程度か最大だった。謝辞:本研究はGRENE北極気候変動事業により実施された。