日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG34_1PO1] 統合的な陸域生態系-水文-大気プロセス研究

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*佐藤 永(名古屋大学大学院 環境学研究科)、伊勢 武史(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)、熊谷 朝臣(名古屋大学地球水循環研究センター)

18:15 〜 19:30

[ACG34-P01] GOSAT TANSO-CAI植生指数プロダクト改善のためのエアロゾル補正アルゴリズム

*菊地 信弘1横田 達也1 (1.国立環境研究所)

キーワード:植生指数, 観測手法, GOSAT

温室効果ガス観測技術衛星GOSATに搭載されている雲・エアロソルセンサTANSO-CAI(以下CAI)は、380, 674, 860, 1600 nmの4つの観測波長帯(順にバンド1-4とする)を備えたイメージャ型のセンサである。CAIは、温室効果ガス観測センサTANSO-FTSが計測する大気吸収スペクトルから二酸化炭素濃度などを高精度に導出するために必要な雲やエアロゾルの情報を取得するための補助センサという位置付けではあるが、単体でも炭素循環の研究に資する観測が可能なバンド構成となっており、正規化植生指数(NDVI)が標準プロダクトとして既にリリースされている。CAIは1回帰3日周期で同一地点を同一方向から観測するため、CAIのNDVIプロダクトはMODISのそれとは異なり双方向反射率の影響を補正することは出来ないが、周期が短いことを生かして植生の変化をより短期間に検出することが期待できる。現バージョンのNDVI プロダクトに対しては、衛星観測輝度から地表面反射率を導出する際にエアロゾル補正がなされていない。そのため、エアロゾルの影響を出来るだけ小さくするために、最小反射率の30日間コンポジットからNDVIを算出している。本研究はエアロゾル補正アルゴリズムを開発・適用することにより、より短い期間のコンポジットでも精度の高いNDVIが算出できるようにすることを目的としている。

CAIは観測波長帯が限られているため、本研究では既存のいわゆる最小反射率法やKaufmann法とは異なるアプローチでエアロゾル補正アルゴリズムを開発している。観測量は大気上端反射率でバンド1-4の4つ、推定パラメータはダストなどの大粒子エアロゾルの光学的厚さ、硫酸塩などの小粒子エアロゾルの光学的厚さ、バンド3と4における地表面反射率の計4つである。バンド1と2の地表面反射率はバンド3と4の地表面反射率によってパラメタライズされる。この地表面反射率パラメタリゼーションに最小反射率の30日間コンポジットを利用している。地表面反射率パラメタリゼーションは厳密に成り立つものではないので、エアロゾル量はピクセル単位でなく10×10ピクセル(水平方向5 km×5km)の分解能で導出する。さらに、10×10=100ピクセルの観測データを全て使うのではなく、暗い順に10ピクセルを選択する。そうすると、観測量は40個、推定パラメータは22個になるので最小自乗法によってパラメータを決定する。

図(左)は2013年10月20日のオーストラリア南東部における小粒子のエアロゾル光学的厚さを図示したものである。現状では、バンド4における反射率が0.2以下のピクセルのみを解析対象としている。図(右)は、同じ領域において、Rayleigh散乱の影響のみを補正して算出したNDVIと、エアロゾルの影響も補正して算出したNDVIの頻度分布を比較したものである。エアロゾル補正によりNDVIの分布が0.1程度大きくなる方向にシフトしているが、これはVermote et al. (2002)の結果とも概ね一致している。

今後は地表面反射率パラメタリゼーションの高度化によってアルゴリズムの精度を高めた後、AERONETなどを利用して検証していく予定である。