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[ACG35-12] 播磨灘への生態系モデル適用による陸域からの栄養塩負荷と海域の物質循環との関係解明
キーワード:生態系モデル, 栄養塩負荷, 物質循環, 生産, 播磨灘
富栄養化指標とされているCOD濃度の環境基準達成の主な対策として、陸域からの流入負荷量削減が進められてきたことにより、近年では多くの沿岸海域でCOD濃度の低下がみられ、陸域からの負荷量削減は水質濃度の改善に一定の効果を発揮したといえる。一方で、沿岸海域の栄養塩濃度の低下が海の生産力の低下につながっている可能性が指摘されるようになった。陸域と海域の健全な相互作用を築くという課題に対しては、単純に陸域からの負荷量の増減の制御だけに頼る手法では限界があるという事実に直面している。 陸域からの栄養塩の供給と海域の生産力との関係を把握するには、陸域から供給された栄養塩がどのように生物や有用水産生物に取り込まれ、最終的にどのように漁獲へとつながるかを解明することが有効である。この栄養塩の循環経路は、生物間のネットワーク(様々な戦略を持った生物間の競合・捕食など)としても非生物的な効果(沿岸域の流動場の変化・貧酸素水塊による捕食者の死滅など)としても複雑に絡みあっており、陸域からの負荷量の増減に対する応答は単純ではない。 本報告では、瀬戸内海播磨灘加古川周辺の沿岸海域において、ノリや二枚貝の水産有用種を含む生態系モデルを構築し、海水交換促進対策や干潟・浅場増設対策等を仮想的に施した場合の陸域からの負荷量増減に対する物質循環量の応答を定量評価した。海域での物質循環のネットワークの構造によって、陸域からの負荷量増加に伴う水産資源の応答は、増加する場合も減少する場合もあった。浅場等の少ない現状の海域での流入負荷の増加は沿岸部の貧酸素化を助長する影響がみられる一方、浅場造成により、陸域からの負荷量の増加分を、ノリの収穫・二枚貝の漁獲を同時に上昇させ、海域全体での物質循環をより大きくする方向に作用させていた。