17:45 〜 18:00
[ACG35-13] 伊勢湾流域圏の水系総合モデルの構築
キーワード:統合的水資源管理, 土地利用変化, 富栄養化, 貧酸素水塊, 伊勢湾
流域の「統合的水資源管理」の重要性が1990年代に認識され,陸域と海洋の一体的な水系管理の重要性が注目されている.しかし,科学的な裏付けが乏しいために,未だ概念論に留まっている.政策決定の場でも広く利用可能な形に実体化していくためには,陸域における環境変化が海洋環境へ及ぼす影響が科学的に評価される必要がある.そこで,本研究では,伊勢湾流域圏を対象として,陸域,河川,海洋における水・物質・生態系モデルを結合した「水系総合モデル」の構築を進めている.対象としている物質は,炭素(C),窒素(N),リン(P),生態系は低次生産者である.また,ユーザーによる自由な改変が可能なモデルとなるように,既存のオープンソースプログラムをベースにしてコードを付加することを開発原則としている.モデルの構造は,水文・水質モデル,河道モデル,海洋モデル,生態系モデルを結合したものである.水文・水質モデルは,森林・草地などの自然植生地にはPnET-BGC,農地にはSWATモデルを適用した.また,都市域からの生活排水負荷量はタンクモデルによる流出と原単位で与えた.さらに河道プロセスは,Kinematic Wave法による一次元開水路モデルと,水域の低次生産を考慮したNPZDモデルとを組み合わせた.また海洋モデルにはROMSを用いた。加えてダム操作規則を組み込みダム群の影響を考慮した.モデルの検証期間は観測データがそろっている2000~2010年の期間とし,時間解像度は1日,気象データとして2kmメッシュの高解像度データセットを用いた.標高データにはASTER-GDEM,植生データは国土数値情報,土壌・地質データは20万分の1土地分類基本調査から取得したデータを用いた.また,ダム操作規則は,国土交通省地方整備局等から入手した.流域の流出についてはおおよそ再現することができたが,水質の再現性は良好とは言い難かった.原因として農業用水の取水・排水が考慮されていないことが考えられた.また海洋モデルとの結合がなされていないため,今後は,陸域モデルの改良,海洋モデルとの結合と検証,そして感度解析を進めていくことが課題である.