日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG37_28PM1] 熱帯におけるマルチスケール大気海洋相互作用現象

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 423 (4F)

コンビーナ:*名倉 元樹((独) 海洋研究開発機構)、長谷川 拓也(独立行政法人海洋研究開発機構)、清木 亜矢子(海洋研究開発機構)、東塚 知己(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、時長 宏樹(ハワイ大学国際太平洋研究センター)、大庭 雅道(電力中央研究所 環境科学研究所 大気海洋環境領域)、今田 由紀子(東京大学大気海洋研究所)、座長:長谷川 拓也(独立行政法人海洋研究開発機構)、今田 由紀子(東京大学大気海洋研究所)

14:30 〜 14:45

[ACG37-07] 太平洋暖水プール北部における大気海洋相互作用

*長谷川 拓也1永野 憲1服部 美紀1井上 知栄1久保田 尚之1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:太平洋暖水プール北部, 大気海洋相互作用, マルチスケール時空間変動

ENSOメカニズムの理解は遅延振動子理論の提唱(1980年代後半)によって、飛躍的に進歩したが、最近の研究では遅延振動子理論では説明できない経年スケールの大気海洋場の偏差が赤道外太平洋(太平洋暖水プール北端からフィリピン海)に存在することが指摘されており、この暖水プール北端周辺海域の変動が赤道域の大気海洋変動にが影響する可能性が指摘されている(western Pacific oscillator modelなど)。また、長周期変動(quasidecadal:QD変動やより長期の変動)に関しても海面水温偏差などが、この海域に出現することが過去の研究から指摘されている(e.g., White et al. 2003; Hasegawa et al. 2013)さらに、フィリピン海では、夏季・冬季モンスーンやコールドサージ、北進ISV、PJ pattern、熱帯低気圧などの短周期変動が存在することが指摘されており、フィリピン海は、様々な時間(および空間)スケールにおいて、air-sea interactionが盛んな海域であると考えられる。また、これらの現象はフィリピン海のみならずインド洋や、西部赤道太平洋や日本・アジアの極端気象現象・気候変動に関連していることが指摘されている(例えばPJパターンを含む広域リンク:Nitta 1987; Xie et al. 2010)。日本に影響を与える要因として黒潮続流域における小規模air-sea interaction (hot spot)の研究が近年盛んに実施されているが、フィリピン海はその上流に位置しており、フィリピン海の変動が黒潮続流域の大気海洋変動のバックグランドとしての役割を果たす可能性がある。くわえて、複数の水塊や海洋流速ジェットなどのような特徴的な海洋変動場が存在する海域であることが過去のデータから示唆されている。このように暖水プール北端やフィリピン海は、ENSOや他の現象の発生・発達に関連して、局所的のみならず海盆規模・全球規模の気象および気候変動に寄与する可能性がある。しかしながら、北緯10度以北の暖水プール北端やフィリピン海は、大気海洋同時観測が長期的に実施されたことがなく、現在でも観測網の「空白域」となっている。また気候モデルの夏季モンスーン再現性も現実的ではないことが最近の研究で指摘されており(e.g., Inoue and Ueda 2009)、暖水プール北端およびフィリピン海におけるmulti-scale air-sea interactionの実態は解明されていない。本発表では、暖水プール北端およびフィリピン海における過去の研究のレビューや著者による最新の解析結果を示すとともに、当該海域におけるmulti-scale air-sea interactionの実態解明に向けた将来の観測システムデザインなどについて議論することを目的とする。