日本地球惑星科学連合2014年大会

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インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW07_29PO1] Insight into change and evolution in hydrology

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*谷 誠(京都大学大学院農学研究科地域環境科学専攻)、松四 雄騎(京都大学防災研究所 地盤災害研究部門 山地災害環境分野)、野口 正二(森林総合研究所)、中北 英一(京都大学防災研究所)

18:15 〜 19:30

[AHW07-P08] 源流域における降雨イベント規模に応じた河川流出機構の変化

*工藤 圭史1嶋田 純1田中 伸廣2 (1.熊本大学大学院自然科学研究科、2.熊本県庁)

キーワード:2成分分離, 河川流出機構, 降雨規模, 地下水流出

地球温暖化に起因して降水量や降雨強度などの降雨イベント特性が増加しているため、世界中の地域で洪水や地滑りなどの災害が多く発生している。この変化は、水資源の在りかたを変えるかもしれない。本研究では地下水流出の割合と降雨規模の関係を理解するために、熊本県阿蘇山西麓台地に隣接する森林流域と牧草流域において2012年7月から2013年11月までのあいだの降雨イベントを対象にECを用いてハイドログラフのニ成分分離を実施した。河川水のECは、ECロガーを用いて各パーシャルフリュームにおいて10分間隔で記録した。これらの観測データと先行研究(Onda et al.,2006; 一柳・加藤,1998; Ichiyanagi et al.,1994; Iwagami et al.,2010; 大類ほか,1992; 勝山ほか,2000; Katsuyama et al.,2001)から、河川流出量・地下水流出の割合・降雨規模の関係についてまとめて検討を試みた。
総降水量が9 mmから727 mmで、ピーク雨量が5 mm/hから94 mm/hまでの様々な規模の18回の降雨イベントを観測した結果、従来の観測研究において報告されている範囲の降雨規模では、地下水流出割合が降雨規模の増加に伴う減少傾向が認められ、従来の結果と一致していた。この場合、降雨の増加に伴う河川流出量は降雨起源の”新しい水”の増加によるものと考えられる。一方本研究では、従来の研究では観測されていない大降雨時の観測値が加わっており、総降水量が200 mmでピーク時の雨量が20 mm/h以上の場合、地下水流出割合の増加してくる傾向が観測された。この規模の大降雨の場合、河川流出量の増大は地下水起源の”古い水”が押し出されて増加しているもの考えられた。本研究の観測結果から、降雨の規模が河川流出機構の形成に影響を与えていると考えられ、降雨規模に応じた二段階の分類を試みた。第一段階では、降雨開始前の河川流出の大部分は”古い水”によって形成されているが、降雨規模の増大に伴い河川水を占める”古い水”成分が徐々に減少し、総降水量が200 mm付近のイベントになると、河川水の大部分は降水成分を主体とする”新しい水”によって支配される。その後、総降水量が200 mmを超えるような大降雨の場合には、これまでの傾向と逆に河川流出量の増加に伴い河川水中に占める地下水を主体とした”古い水”成分が増加する(第二段階)。