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[AHW25-06] 白神山地における河川水,湧水の安定同位体マップ
キーワード:白神山地, 安定同位体マップ
白神山地は青森県南西部と秋田県北西部にまたがる山岳地帯の総称である.本山岳地域における純度の高い原生的なブナ林を主体とする独自の生態系が高く評価され,1993年12月には世界遺産(自然遺産)に登録された.また,1995年に策定された「白神山地世界遺産地域管理計画」によって核心地域(面積10,139 ha)は原則として入山が禁止されており,現在は人間活動による直接的な影響を受けていない状況にある. しかしその一方で,近年では酸性雨による生態系への影響等が懸念されるなど,大気降下物中に含まれる人為起源物質による山地・森林環境中への窒素付加量の増加が問題となりつつある.我々は,2011年より白神山地の渓流水,湧水を主な対象として,水の主要化学組成および水素・酸素安定同位体比測定を行い,水の起源や涵養プロセスに関する検討を進めてきた.現在までに白神山地南部域の49地点,北西地域の20地点において採水し,各種水質項目の分析を行っている. 採取した水試料のdelta-18Oおよびdelta-Dは-8.2‰~-11.5‰,-48.8‰~-64.8‰の範囲の値をとっており,現在までに得られている全てのデータを用いて求めた回帰直線はdelta-D=5.7delta-18O+1.7(R2=0.88)となった.これに対して白神山地西部(日本海側)の試料のみを用いて求めた場合にはdelta-D=6.0delta-18O+0.5(R2=0.98)の関係が示され,山地の西部や東部など採水地域の違いにより,それぞれ高度効果の影響が異なっている可能性が示唆された.また,同一地点で複数回の採水を実施して得た試料では,春季・秋季(6月・11月)のdelta- D・delta-18O値に比べて夏季(8月,9月)の方が低い値をとっており,採水時期の違いによっても同位体比が異なることが確認された.