11:30 〜 11:45
[AHW25-10] 羊蹄山の山麓湧水の涵養標高と滞留時間
キーワード:羊蹄山, 湧水, 涵養標高, 滞留時間, 年代トレーサー
羊蹄山は、北海道後志地方南部に位置する標高1,898mの第四紀成層火山である。成層火山らしい見事な円錐形の山体形状を有し、蝦夷富士と形容される。本家富士山と同じく、火山体の透水性は非常に高く、山体地下水の大部分は、標高250m付近の山麓部から湧水として流出する。山麓湧水については古くから水文化学的な調査が行われており、山体の東側と西側では湧水の流量・水温・水質の分布に顕著な違いがあり、東側の湧水を形成する地下水流動系の規模が相対的に大きいと推察されている(山口、1972)。本研究では、湧水の涵養標高や滞留時間を見積もり、地下水流動系の規模を定量的に明らかにすることを目的としている。2013年8月に山麓湧水14地点において採水を実施し、酸素・水素安定同位体比と年代トレーサー(3H, CFCs, SF6)濃度を測定した。湧水の水素同位体比は、-80~-72‰の範囲にある。この地域の地下水涵養線(産総研未公表データ)を利用すると、湧水の平均涵養標高は500m~1000mと見積もられる。地域的にみると、北麓や南麓の湧水において涵養標高が高い傾向(750m以上)が認められる。湧水のCFCs, SF6濃度は、いずれも大気の溶解によって説明できる範囲内にあり、全地点でCFCs, SF6に基づく年代推定が可能であった。トレーサープロット(CFC-12 vs CFC-11, CFC-12 vs SF6)によって地下水の流動様式を検討した結果、ピストン流モデルよりも指数関数モデルの方が適していると判断された。指数関数モデルによって得られた山麓湧水の平均滞留時間は11年~35年の範囲にあり、平均涵養標高が高く、地下水の平均流動距離が長い湧水において、平均滞留時間が長い傾向が認められた。発表ではトリチウムの結果を加えた総合的な地下水年代に加え、山体内の地下水貯留量と水理地質特性との関係について検討した結果を紹介する予定である。