日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27_1AM1] 水循環・水環境

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 424 (4F)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)

09:15 〜 09:30

[AHW27-02] 電磁探査を用いた隠岐島前・中ノ島における塩水・淡水分布の検討

*草野 由貴子1鈴木 浩一2徳永 朋祥1 (1.東京大学、2.電力中央研究所)

近年の研究からは、沿岸域の地下深部や海底下において、最終氷期に涵養された淡水地下水が存在していることが明らかにされてきている。その説明の一つとして、難透水性の地層が存在することにより、淡水から塩水への置換に遅れが生じるためであるする考えが提唱されている(e.g. Groen et al., 2000)。このことは、沿岸域の地下水の塩水淡水分布の理解のためには、海水準変動の影響を考慮に入れる不可欠であるといえる。本研究の対象地域である隠岐島前・中ノ島は大陸棚上の島嶼であるため、最終氷期から現在までの海水準変動に伴い、地下深部の塩水・淡水分布は海水準変動の影響を受けていると推測される。中ノ島の温泉井掘削時の報告書によると、深度320mまで掘削したに揚水された地下水のCl濃度は海水の約20%程度を示す一方で、温泉井の掘削完了後(スクリーン深度560~866m)から揚水される温泉水のCl濃度は海水の約5%程度であり、温泉水の同位体組成、年代指標、溶存成分の結果から、現在よりも寒冷な気候下で涵養された地下水であることが示唆されている(Kusano et al., in press)。これらの結果から、少なくとも深度320mより浅い部分には塩濃度の高い地下水、より深い部分には寒冷な気候下で涵養された塩濃度の低い地下水が存在していることが示唆される。そこで、本研究では、中ノ島における塩水淡水分布とその形成要因を明らかにすることを目的とし、CSAMT法を用いた電磁探査を行った。CSAMT法では、人工的に送信した電磁波により地盤に誘導された地電流を計測することで深度約1kmまでの比抵抗を求めることが出来る(物理探査学会,1998)。今回の発表では、電磁探査により得られた比抵抗分布から推測された中ノ島の塩水淡水分布と地質構造に関する検討結果について述べる。電磁探査の計測地点は、中ノ島の温泉井掘削地点を東西方向に横切る約2.5㎞の測線沿いに、約100m間隔で設置した。計測により得らえた見かけ比抵抗は、解析コード(Uchida and Ogawa, 1993)を用いて2次元逆解析を行い、深度約1kmまでの比抵抗分布を求めた。また、電磁探査で得られる地下の比抵抗構造を解釈するために、中ノ島から採取された岩石試料を塩濃度の異なる溶液で飽和させて比抵抗の測定を行った。測線において計測された比抵抗の2次元逆解析を行った結果、深度約100~200mに東西方向に広がる低比抵抗帯がみられた。その下部の約200~500m程度には高比抵抗帯存在し、それよりも深部には低比抵抗帯が分布していた。深さ100~200mおよび500m以深の比抵抗は、中ノ島から得られた堆積岩、火山岩が塩濃度の高い水で飽和された際の比抵抗の値とほぼ整合していた。この結果は、温泉井の掘削時に320mより浅い部分から塩濃度の高い地下水が揚水され、温泉井掘削完了後に揚水された地下水の塩濃度が低かった結果とも矛盾していない。上述のように隠岐島前は大陸棚上に位置する島嶼であるため、海水準変動に伴う陸域面積の変化によって淡水・塩水の分布が影響を受けてきたことが推測される。仮に、深度100~200mの低比抵抗帯が塩濃度の高い地下水、200~500m程度の高比抵抗帯が塩濃度の低い地下水の存在を示しているとすれば、今回の計測結果は、最終氷期の海水準が低い時期に地下深部まで淡水地下水が浸透し、その後の海進によって深度100~200mに塩水が侵入しているが、それより深い部分の淡水は塩水に置換されずに残っていることを示唆しているのかもしれない。今後は、比抵抗分布と地質構造、地下水の化学分析の結果を併せて検討することで、地下の塩水・淡水分布について適切な解釈を進める必要があり、その検討を行う予定である。引用文献 物理探査学会,1998.物理探査ハンドブック,手法編.301-326. Groen, J. et al., 2000. J. Hydrol. 234, 1-20. Kusano et al., in press, J. Hydrol. Uchida and Ogawa, 1993. Geological Survey of Japan Open-File Report, 205.