日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27_1AM1] 水循環・水環境

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 424 (4F)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)

10:30 〜 10:45

[AHW27-07] ベトナム・ハノイ市郊外における地下水の起源と地下水涵養機構の検討

*林 武司1黒田 啓介2An Do Thuan2滝沢 智2Nga Tran Thi Viet3 (1.秋田大学教育文化学部、2.東京大学大学院都市工学研究科、3.Hanoi University of Civil Engineering)

キーワード:ハノイ市, 地下水涵養機構, 地下水位変動, 同位体, 地下水年代

ベトナムの首都であるハノイ市では,都市化に伴って水資源の需要が急増している.しかし,ハノイ市の主要な水源の1つである地下水には,自然由来のヒ素が高濃度に含まれることがある.一方,近年では,もう1つの主要な水源である紅河の水量の減少が指摘されている.このため,量・質ともに安定した水源の確保が喫緊の課題となっている.特に郊外では,地下水が主要な水源であり,開発の進行に伴って揚水量が増加している.これにより,上部帯水層中の地下水位が大きく低下し,旧来の井戸が枯れる地域も現れている.また,開発に伴う造成によって,小河川・湖沼等の自然水域や水田が減少している.このように,地表・地下ともに水環境が大きく変化し続けているが,水循環機構については不明な点が多い.しかし地下水を持続的に利用するためには,地下水の涵養・流動機構を明らかにすることが重要である.我々は,開発が進行している郊外の複数の集落において,地下水の起源や涵養機構等を明らかにすることを目的として,地表水・地下水の水質・同位体組成の定期的な観測や地下水年代の検討,地下水位のモニタリングなどを実施している.我々のこれまでの調査により,紅河より離れた地域では,“蒸発の影響を受けた水”が主要な地下水涵養源の1つであることが明らかとなっている.上部帯水層(不圧帯水層)の地下水位モニタリングならびに地下水の地球化学性状の定期観測の結果,地下水位ならびに地下水の酸素・水素安定同位体比は,降水量の雨季・乾季の変動に応じて変動した.ただし,降水量,地下水位,酸素・水素同位体比の季節的な変動には,それぞれ1~2カ月程度の時間差が認められた.これらの差は,地表からの水の浸透時間を反映していると考えられた.一方,地下水中のCFCs・SF6濃度から,見かけの地下水滞留時間として数十年程度の滞留時間を有することが示された.発表では,これらの結果に基づく地下水の起源や涵養機構の検討結果について報告する.