日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27_1AM2] 水循環・水環境

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:15 424 (4F)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)

11:00 〜 11:15

[AHW27-08] ベトナムドンナイ川流域上部における気候変動の検討

*Truong Nguyen Cung Que1近藤 昭彦2 (1.千葉大学大学院 理学研究科 生命・地球科学専攻、2.千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:ドンナイ川流域, 気候変動, 経験的モード分解, EMD

IPCCよるとベトナムは気候変動によって最も深刻な影響を受ける国の一つだと評価されている。すなわち1m海面が上昇すると、人口の約10~12%が直接影響を受ける可能性があり、経済的損失が10%GDPにのぼると予測されている。また雨季における降水量の増加と海面上昇が組み合わさると、沿岸域の低地に深刻な影響を与える可能性がある。それは沿岸デルタ地域の40,000km2、メコンデルタの90%が洪水になるという予測もある。高原地域では気温がより顕著に上昇すると予測される。ベトナム南部に位置するドンナイ川はメコン川と並び、南部の主要な水資源を供給している。ドンナイ川流域は東南部の高原から発し、ベトナム南部の主要電源ダムであるTriAn貯水池発電所を経て、下流でメコンデルタ下流の支川と合流した後、東海まで流れていく。メコン川は気候変動による水資源の変動、メコンデルタ上流部のカスケード型水力発電所システムやダム建設などによる下流の河川流量や土砂輸送に対する潜在的な影響に関する論争が続いているが、ドンナイ川流域はベトナムがコントロールできる水資源の供給源であるため、気候変動による水文レジームの変化及びそれへの適応について検討することが必要だと考えられる。本研究ではドンナイ川流域における気候変動による流出量と気象データの長期変化を検出することを目的とする。対象流域のドンナイ川流域の水文情報として、ベトナム国立水文気象予測センター(NCHMF: National Center for Hydro-Meteorological Forecasting);各地方の天然資源環境省(DONRE:Department of Natural Resources and Environment);TriAn水力発電所管理所の最近の20年間(1992年から2011年まで)観測データを経験的モード分解(EMD; empirical mode decomposition)より降雨・気温・パン蒸発・流域出口の流出量の長期変化を検出した。複数の周波数成分を持つ信号を狭帯域の信号に分解する手法であるEMDは、時間-周波数解析手法として最近非線形および非定常な性質の時系列データを分析するために設計され開発されている。この狭帯域の信号は固有モード関数(IMF; Intrinsic mode function) と呼ばれる。対象流域内における最近の20年間の降雨量・気温がわずかに増加する傾向にありが逆にパン蒸発・流域出口の流出量がやや低下する傾向にある結果が出た。メコンデルタ河委員会や世界銀行のベトナムの気候変動について研究結果と同じように降雨量と気温の増加傾向を検出できた。また流域出口の流出量の低下傾向の原因としては流域内の土地被覆・土地利用の変化が原因の一つだと考えられるが、それについて別の研究を行う。