日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気海洋・環境科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27_1AM2] 水循環・水環境

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:15 424 (4F)

コンビーナ:*林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、内田 洋平((独)産業技術総合研究所地質調査総合センター)、樋口 篤志(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、長尾 誠也(金沢大学環日本海域環境研究センター)

11:15 〜 11:30

[AHW27-09] モンゴルでの近年の気候・植生変動からみた遊牧の持続可能性に関する一考察

川上 聖1、*樋口 篤志2 (1.日本HP、2.千葉大学 環境リモートセンシング研究センター)

キーワード:モンゴル, 放牧, 極端低温現象, NDVI, GRVI

ユーラシア大陸東部の内陸に位置するモンゴル国は,国土の約8割が草地であり,遊牧牧畜が伝統的に営まれてきた.近年の市場経済体制への移行や冬の寒雪害である“ゾド”が頻発したことにより,同国の基幹産業である牧畜は著しい変化を見せている.本研究ではモンゴルにおける気候変動と植生利用という観点から,遊牧の持続可能性について考察を行った.1979年から2012年の冬季にかけて,JRA-25及びJCDASの日平均地表面気温を解析した結果,極端な低温発生が近年増加していたことが明らかとなった.これは東アジアに強い寒波をもたらすメカニズムと関連し,起点である北極付近のバレンツ海の海氷減少による大気循環の変動が要因である.2009年冬季の寒波は家畜頭数の全国的な減少をもたらし,多くの地域で放牧圧減少による植生回復が見られた.2009年から2012年にかけMODISより得られたNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)とGRVI(Green-Red ratio Vegetation Index)から,短期的な植生回復の過程,植生状態の解析を行った.植生回復の早い領域が地形と対応し,現地観測による植生データと整合性もみられた.これはバイオマスのみでは判断できない,2つの植生指数の組み合わせによるものであり,モンゴル草原域において植生状態の把握が可能であることが示された.