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[AHW28-04] 水源林からの窒素、燐の流出量の推計とその抑制策の検討
キーワード:水源涵養林, 面源負荷, 窒素, 燐, LQ式
本研究では水源林からの面源負荷の流出を抑制する施策を検討する。このために、森林からの窒素、燐の面源負荷量の推計とその検証を行ったうことを目的としている。対象地域は神奈川県横浜市の水源水源涵養林である山梨県南都留郡道志村(森林面積7,468ha)の私有民有人工林(4,594ha)及び横浜市所有の水源涵養林(2,8234ha)である。 水源涵養林はは横浜市が1916年に取得以降、計画的な水道局の管理の下森林管理適宜間伐施業が行われているが、私有民有林人工林については昭和30年代から林業が衰退し現在では林業による間伐はほとんど実施さぼ行われていない。そのため、河川流量・地下水水源涵養量の低下、土砂流出量や面源負荷量の増加が懸念されている。 道志川の流末端にある道志ダムのは年間の平均流入量は6.7(?/sec)であり、そのうち3.0(?/sec)は相模ダム・、宮ヶ瀬ダムには導水し、3.7(?/sec)は下流に放流している。そのため窒素、燐等の面源負荷量の増加は相模ダム・、宮ヶ瀬ダム等のダム湖の水質に大きな影響を及ぼすと懸念される。 森林の面源負荷は、降雨から蒸発散を差し引いた表面流出の流出強度によって変化する。この点を考慮するために本研究ではKareiv(P.Kareiva et, al.,2011)らが開発したInVEST modelを用いて面源負荷量を推計した。流出量を推計するための用いた式を(1)~(3)に示す。 EXPx= EAFx*polxΠ(1-Ey) (1) EAFx= logΣYu/log∑Yw (2) Yx = ∑(1-AETx/Px)Ax (3)ここで、xは流域におけるグリッドの位置、yは流域においてxよりも上流に位置するグリッド、uはxの上流部に位置する全てのグリッド、wはx,yが属する流域を意味している。polxはxにおける面源負荷発生量、Eyはグリッドyにおける窒素、燐の表面流出の保持係数、EAFxはxにおける表面流出の流出強度を示しており(2)式で表されるあらわされる。Yxとは区画xにおける流出量、Pxとは区画xにおける年降水量、AETxとは区画xにおける年蒸発散量、Axとは区画xの面積である。polxはS.Shresthaら(S.Shrestha et. al.,2007)が富士川流域で作成した森林、農地、都市の面源負荷原単位を用いた。またEyはLQ式と比較することで算出するためゼロと設定して推計した。 上記InVEST modelによる面減負荷量の推計に加え一方で、負荷量を検証するために流末端の道志ダムにおける流量データ(1955年~2012年)と水質観測データ(1991年~2012年)からLQ式を作成し窒素とリンの年間フラックスを算出した。結果として、表面流出の保持係数をゼロとした場合の窒素、燐の面源負荷量の推計結果はそれぞれ5.9251.5(t/yr)、5.9(t/yr)であり、そのうち人為由来のものは0.11.8(t/yr)、0.1(t/yr)であった。このことから面源負荷量のほとんどが山林からの負荷であることが明らかにされた。一方で2012年の道志ダムにおけるLQ式を作成したところ窒素(TN=0.791*Q0.0616, R2:0.8374)、燐(TP=0.00762*Q0.0238+0.004)という結果が得られた。この式を用いて年間の窒素、リンの流入量を推計するとそれぞれ192.3(t/yr) 、2.4(t/yr)192.3であり推計結果と59.0(t/yr)、3.5(t/yr)程度の差があった。結論として、InVEST modelでの推計結果とLQ式による年間の窒素、燐のフラックスにはそれぞれ59.0(t/yr) 23.5%、3.5(t/yr) 59.3%の差があったが、これが発生地点から流下する過程で窒素、燐が保持された量であると考えられる。降雨後の雨水の表面流出は谷に集約的に流下するためことが明らかであり、下流のダム湖の水質保全のためには森林の谷にある植生の適正管理、間伐等が重要であることが明らかにされた。