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[AHW28-08] 森林流域における平水時の渓流水中の放射性セシウム濃度
キーワード:放射性セシウム, 平水, 渓流水, 森林
福島第一原発事故により放射性セシウムが環境中に放出された。森林は放射性セシウムを系内に保持する傾向が強いが、微量の放射性セシウムが渓流水を通じて流出し、農作物や河川や湖沼の生態系に影響を及ぼしている可能性がある。そこで、福島県の森林小流域から流出する平水時の渓流水の放射性セシウム濃度とその特徴について報告する。調査は、福島県郡山市(年雨量1163 mm,平均気温12.1 ℃)の福島県林業研究センター多田野試験林(北緯37°22′,東経140°14′)の小流域(流域面積1.2ha,標高358~409m,起伏比0.42)で行った。地質は堆積岩(砂岩・凝灰岩)である。植生はスギ・ヒノキ人工林(約48年生)にコナラ等落葉広葉樹林とアカマツ林が混在する。三角堰と水位計を流域末端に設置して流量を観測した。渓流水は2~3週間ごとに約10L採集した。ガラス繊維ろ紙(0.7μm)により懸濁態を分画した後、溶存態セシウムは固相抽出ディスク(住友3M製,エムポアラドディスクセシウム)に濃縮して測定した。2012年6月~2013年3月のデータを用いて検討したところ、溶存態のセシウム137濃度は夏季に高く、冬に低い傾向を示した。また、1、2月は検出限界以下であったが、3月には再び濃度上昇を示した。平水時の渓流水中の溶存態セシウム137濃度の変動は温度上昇による有機物分解と関連している可能性が考えられた。懸濁態のセシウム137濃度も溶存態と同じ様に、概ね夏季に高く、冬季に低い傾向であった。流量が多い時ほど懸濁物質の流出が多くなる傾向であること、また積雪期は流域が積雪に覆われて、懸濁物質の流出が少なくなるためと考えられた。