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[AHW28-P13] 秋田県玉川における主化学成分濃度とストロンチウムおよび硫黄同位体比を用いた河川水混合過程の推定
キーワード:河川水の混合, 秋田県, 主化学成分濃度, ストロンチウム同位体比, 硫黄同位体比
秋田県玉川は,その上流(渋黒川)に玉川温泉大噴から強酸性(pH=1.2),高温(T=98℃)の温泉水が混入するため,下流域まで河川水が酸性である.その酸性度を弱めるために,温泉水を河川流出前に中和する施設が設置されている.本研究では,河川水の主化学成分濃度やストロンチウムおよび硫黄同位体比をトレーサーとして,支流の合流による河川水の混合率を推定し,この酸性温泉水の下流への影響範囲を明らかにすることを目的とした.玉川温泉大噴の温泉水は,中和処理施設に導入され,石灰岩で中和されたのち,渋黒川に放出される.大噴の温泉水は,塩化物イオン,硫酸イオン濃度が高く,硫黄同位体比が高い(δ34S=31.8‰).さらに,中和処理により,カルシウムイオン濃度とストロンチウムイオン濃度が高くなり,ストロンチウム同位体比も高い(87Sr/86Sr=0.7068).渋黒川に放出された温泉水は,渋黒川が玉川本流に合流するまでに混合率20%まで河川水により希釈される.さらに,玉川本流との合流により8%まで希釈される.その後,雄物川との合流までのあいだに主化学成分濃度は,ほぼ流入する支流とほぼ同じ値になる.また,pHは約3から約7まで変化する.ストロンチウム同位体比については,大噴が0.7040,中和施設が0.7068,合流する各支流の値は,それぞれの流域の地質を反映して0.7049-0.7062の範囲で異なる.したがって,主化学成分でみられたような二成分のはっきりした混合関係はみられないが,ほぼ同様な混合関係を示す.硫黄の同位体比は大噴のSO42-が31.8‰で,雄物川合流点近くの河川水のSO42-の値が6.5ないし8.8‰で,主化学成分で見られた二成分の混合関係とほぼ同じ混合関係がみられる.これらの結果から,玉川における合流する各支流の混合関係について発表する.