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[AHW29-08] 台風攪乱による落葉広葉樹林の二酸化炭素吸収量の変化
キーワード:落葉広葉樹林, ササ, CO2フラックス, 攪乱
森林では自然攪乱が様々な規模・頻度で起こり、攪乱は森林の二酸化炭素吸収量にも大きな影響を与える。日本では台風による風害でしばしば大規模攪乱が起こる。2004年には台風18号が、北海道胆振・石狩地方を中心に大きな被害をもたらした。札幌市南東部に位置する羊ヶ丘実験林(札幌森林気象試験地:SAP)も大きな被害を受けたが、台風被害をうける以前からフラックスタワーによるNEEの観測など、二酸化炭素吸収量の研究が行われており、台風による施設被害のため1年あまりのフラックス・気象観測の中断はあるものの、森林の再生過程を調べるため、タワー周辺の森林の枯損木はそのまま残し観測が継続されている。フラックス観測とともにバイオマス量の変化等、この風害による攪乱前後の長期観測結果について報告する。タワーフラックス観測結果では、年間の炭素収支は台風被害後マイナスとなり、現在もCO2放出となっている。風倒による大量の枯損木の供給があったことから分解によるCO2放出が増えたため、生態系呼吸量は顕著に増大し、台風前の約1.5倍となった。一方、GPPは、2007年から2012年の平均は、台風前の4年間の平均の約5%減であった。光合成有効放射量の減衰率およびバイオマス調査から推定した樹木とササの合計年最大LAIは、攪乱前は約7で、台風被害翌年は4まで減少したものの2007年以降は5.5前後で推移している。LAIの回復の主な原因は、ササのLAIが台風前の約2倍になったことによる。樹木の現存量は台風前の約7割となった一方、ササのバイオマス量は1.5倍に増加した。ただし、ササのバイオマス量は樹木の1割前後のため、樹木の被害による減少を補うには至っていない。これらの観測結果から、ササの光合成量の増加により、樹木の光合成量低下の多くが補われているものの、枯損木の増大によって生態系呼吸量が増大したため、結果的に炭素収支は負になったと考えられた。対象森林がCO2のソースからシンクに移行するためには、風倒被害によって供給された枯損木の分解がすすみ、分解による放出量が減少する必要がある。