16:45 〜 17:00
[AHW29-10] 大気汚染物の硫酸によるナラ枯れと木炭による立ち枯れ防止
キーワード:大気汚染,木炭,マツ枯れ,ナラ枯れ,タンニン,リン酸
マツやナラ枯れの原因は虫とされ, 大量の薬剤を散布されたが止まることなく,日本全土に拡大している。原因は化石
燃料の燃焼で発生する硫酸である。産業革命で使用され始めた化石燃料は, 210 年前のグリーンランドのアイスコアから
硫酸イオンとして測定され1), それ以来, 世界中で化石燃料は燃焼を続けている。硫酸は雨に溶解して落ちない限り,
鯉のぼりは風がある限り空中を泳いでいるように, 大気中に蓄積して移動している。風の中の硫酸は接触した樹木に付着
して濃縮と蓄積で濃度が高くなり, 雨で根元に落とされて土壌を酸性化する。硫酸は土壌成分の金属を溶解性金属硫酸
塩に変え, 雨水に溶解した金属イオンは樹木に吸収され, 成長に必須成分のリン酸と化合してリン酸を不活性化する。
マツは松脂の生成量が減少し2)3)4), 防虫効果のあるタンニンは金属タンニン酸になり, 虫に対して無害化する。
虫は大発生して樹木の立ち枯れの原因になる。
コナラ枯れの木炭による防止検討は福島県の国有林*1 12 ha で行った。樹木の全体の構成は, 263 本, コナラは
82 %, 虫の穿孔木は 56 %,枯死木は 3 %である。試験地は南側も北側も 800m~1000m の山が連なり,その間の低地に
只見川が流れている。試験地は北側と東側が川に隣接し,標高は 45 8 m~486m である。ナラ山はA区~F区と 6 区画
に区切り,各区3本の標準木を定め,炭散布前の各区の標準木の下の土壌の水素イオン濃度と硫酸イオン濃度 (eq/dm3)
との関係を図に示した。土壌の中の水素イオンは硫酸が土壌成分と反応するときに水となるため低くなり E14 まで大差
がない。硫酸イオン(SO42-)は反応後も式が変わらないので測定され, 表層土の SO42-濃度は生育している場所によ
り大きく変わる。大陸からの偏西風は低地の川の上を西から東に吹き抜ける。C14 は林道に近く, D 区は北の端で川に近
く, E, F 区も東側の川に近い。土壌の深さ 10cm と 20cm は, SO42-濃度が低くて大差がなく, 10cm 以下には浸透が少な
い。SO42-濃度から水素イオン濃度を引いた残りの SO42-濃度は,土壌成分のアルミニウムや鉄等と化合した量に相当し,
SO42-濃度に相当する金属イオンが樹木に吸収されて, リン酸は不活性化し, タンニンは無害化し, 虫が大発生して立ち
枯れの原因になる。D 区と E 区は衰退木が多い。
立ち枯れの原因は土壌の酸性化で, 中和剤に木炭を使用した。使用した木炭は粉炭で,スギ 80 %,マツ 20 %で自然発
火防止のために水分 29.34 % (110 ℃ 2 時間乾燥) を含んでいた。A,C,E区に 2011 年 10 月に3トンの炭を撒布し
た (コナラ 117 本, 0.3898ha)。樹木は生長に必要でアルカリ金属を含み, 炭化するとそれらの金属は炭酸化合物や酸化
物になり木炭の中に残る。雨水は木炭にかかるとてアルカリ溶液になり, 酸性土壌を中和し, 残った元素は理想的な割合
で含む栄養源になる。炭の撒布効果は, 木から樹液を流出している孔は当年虫が穿孔した孔として, 2011 年 10 月の炭
散布前の数と 2013 年 10 月の数を比較すると炭撒布区の穿孔数は減少し, 炭無撒布区では増加している。F 区は無散布
区であるが減少し, その理由は, 炭撒布区の E 区に隣接し, 標高が E 区より低いため, 雨によりアルカリ成分が移動し
て, 効果が出たと考えられる。ナラの立ち枯れは酸性土壌を木炭で中和することで, 虫の穿孔数が減少し, 立ち枯れを
防止できると考えられる。
コナラの木の虫の穿孔数別に測定値を比較すると, 穿孔数 300 以下の木の直径は 38.5cm に対し, 穿孔数の 300 以上
の木は 53.0cm と太く, 土の pH の差が低いが, 太い木の下の土の硫酸イオン濃度が高い。太い木は細い木より葉の量が多
く, 表面積が広いために硫酸の捕集量が多くなり, 土壌の酸性化が早くなり金属イオンを溶出し, タンニンを無害化して
穿孔数が増加したと考えられる。
*1 福島県大沼郡金山町大字栗山上平国有林 547 ち林小班・会津森林管理(23 会い管理署第 418 号)
平成 23.9.27~28.3.31 使用許可協定書締結
謝辞
本研究は NPO 法人森びとプロジェクト委員会 (理事長岸井成格氏) の皆様の御協力によるもので感謝申し上げます。
参考文献
1) 渡邉興亜・本山秀明・牛尾収輝・森本 真 (2003) 遺伝, 別冊 17 号 pp.58-68
2) 大森禎子(2010) 硫黄酸化物と樹木の立ち枯れの関係, 河川文化を語る会講演集 (その 30), pp.85-163. 日本河
川協会発行
3) 大森禎子・岩崎真理 (2010) 木質炭化学会,7,(1),pp.3-11
4) 大森禎子(2013)日本奥山学会, 1, pp.3-18.\
燃料の燃焼で発生する硫酸である。産業革命で使用され始めた化石燃料は, 210 年前のグリーンランドのアイスコアから
硫酸イオンとして測定され1), それ以来, 世界中で化石燃料は燃焼を続けている。硫酸は雨に溶解して落ちない限り,
鯉のぼりは風がある限り空中を泳いでいるように, 大気中に蓄積して移動している。風の中の硫酸は接触した樹木に付着
して濃縮と蓄積で濃度が高くなり, 雨で根元に落とされて土壌を酸性化する。硫酸は土壌成分の金属を溶解性金属硫酸
塩に変え, 雨水に溶解した金属イオンは樹木に吸収され, 成長に必須成分のリン酸と化合してリン酸を不活性化する。
マツは松脂の生成量が減少し2)3)4), 防虫効果のあるタンニンは金属タンニン酸になり, 虫に対して無害化する。
虫は大発生して樹木の立ち枯れの原因になる。
コナラ枯れの木炭による防止検討は福島県の国有林*1 12 ha で行った。樹木の全体の構成は, 263 本, コナラは
82 %, 虫の穿孔木は 56 %,枯死木は 3 %である。試験地は南側も北側も 800m~1000m の山が連なり,その間の低地に
只見川が流れている。試験地は北側と東側が川に隣接し,標高は 45 8 m~486m である。ナラ山はA区~F区と 6 区画
に区切り,各区3本の標準木を定め,炭散布前の各区の標準木の下の土壌の水素イオン濃度と硫酸イオン濃度 (eq/dm3)
との関係を図に示した。土壌の中の水素イオンは硫酸が土壌成分と反応するときに水となるため低くなり E14 まで大差
がない。硫酸イオン(SO42-)は反応後も式が変わらないので測定され, 表層土の SO42-濃度は生育している場所によ
り大きく変わる。大陸からの偏西風は低地の川の上を西から東に吹き抜ける。C14 は林道に近く, D 区は北の端で川に近
く, E, F 区も東側の川に近い。土壌の深さ 10cm と 20cm は, SO42-濃度が低くて大差がなく, 10cm 以下には浸透が少な
い。SO42-濃度から水素イオン濃度を引いた残りの SO42-濃度は,土壌成分のアルミニウムや鉄等と化合した量に相当し,
SO42-濃度に相当する金属イオンが樹木に吸収されて, リン酸は不活性化し, タンニンは無害化し, 虫が大発生して立ち
枯れの原因になる。D 区と E 区は衰退木が多い。
立ち枯れの原因は土壌の酸性化で, 中和剤に木炭を使用した。使用した木炭は粉炭で,スギ 80 %,マツ 20 %で自然発
火防止のために水分 29.34 % (110 ℃ 2 時間乾燥) を含んでいた。A,C,E区に 2011 年 10 月に3トンの炭を撒布し
た (コナラ 117 本, 0.3898ha)。樹木は生長に必要でアルカリ金属を含み, 炭化するとそれらの金属は炭酸化合物や酸化
物になり木炭の中に残る。雨水は木炭にかかるとてアルカリ溶液になり, 酸性土壌を中和し, 残った元素は理想的な割合
で含む栄養源になる。炭の撒布効果は, 木から樹液を流出している孔は当年虫が穿孔した孔として, 2011 年 10 月の炭
散布前の数と 2013 年 10 月の数を比較すると炭撒布区の穿孔数は減少し, 炭無撒布区では増加している。F 区は無散布
区であるが減少し, その理由は, 炭撒布区の E 区に隣接し, 標高が E 区より低いため, 雨によりアルカリ成分が移動し
て, 効果が出たと考えられる。ナラの立ち枯れは酸性土壌を木炭で中和することで, 虫の穿孔数が減少し, 立ち枯れを
防止できると考えられる。
コナラの木の虫の穿孔数別に測定値を比較すると, 穿孔数 300 以下の木の直径は 38.5cm に対し, 穿孔数の 300 以上
の木は 53.0cm と太く, 土の pH の差が低いが, 太い木の下の土の硫酸イオン濃度が高い。太い木は細い木より葉の量が多
く, 表面積が広いために硫酸の捕集量が多くなり, 土壌の酸性化が早くなり金属イオンを溶出し, タンニンを無害化して
穿孔数が増加したと考えられる。
*1 福島県大沼郡金山町大字栗山上平国有林 547 ち林小班・会津森林管理(23 会い管理署第 418 号)
平成 23.9.27~28.3.31 使用許可協定書締結
謝辞
本研究は NPO 法人森びとプロジェクト委員会 (理事長岸井成格氏) の皆様の御協力によるもので感謝申し上げます。
参考文献
1) 渡邉興亜・本山秀明・牛尾収輝・森本 真 (2003) 遺伝, 別冊 17 号 pp.58-68
2) 大森禎子(2010) 硫黄酸化物と樹木の立ち枯れの関係, 河川文化を語る会講演集 (その 30), pp.85-163. 日本河
川協会発行
3) 大森禎子・岩崎真理 (2010) 木質炭化学会,7,(1),pp.3-11
4) 大森禎子(2013)日本奥山学会, 1, pp.3-18.\