日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 B (地球生命科学) » B-AO 宇宙生物学・生命起源

[B-AO01_28PO1] Astrobiology: Origins, Evolution, Distribution of Life

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*小林 憲正(横浜国立大学大学院工学研究院)、山岸 明彦(東京薬科大学生命科学部)、大石 雅寿(国立天文台天文データセンター)、田近 英一(東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻)、掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、井田 茂(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)

18:15 〜 19:30

[BAO01-P10] 縞状鉄鉱床の形成で最古の有機炭素を生成した機構

*唐澤 信司1 (1.宮城工業高等専門学校 (名誉教授))

キーワード:38億年前, 縞状鉄鉱床, 有機炭素, 二酸化炭素, 炭素同位体比

M. T. Rosing は約38億年前の縞状鉄鉱床が形成された時期に生成された西グリーンランドの堆積岩の中に最古の有機炭素を検出したと報告した[1]。その報告によれば、その堆積岩に含まれた2~5μのグラファイトの微粒子の炭素同位体比(12C/13C)の値が無機炭素のそれより大きい。ところが、連鎖反応を行う分子のシステムにより実現している光合成によって最古の有機炭素が生成されたとすることはできない。本報告において、著者は縞状鉄鉱床の形成によって生成された浮遊物に12Cが少し多く取り込まれた仕組みを提案する。
 炭酸水に鉄の微粉末を加えると、写真1に示すような現象が観察できる。水底の鉄の微粒子の表面に気泡ができて、その気泡が鉄の微粒子を水底から水面に浮上させる。炭素の電気陰性度は水素より大きいので、鉄の酸化によって、炭酸水のCO2から酸素が取り除かれる。自由になった炭素原子は電気陰性度のために鉄と分子間力で結びつき、浮遊物ができる[2]。浮遊物の鉄の原子は酸素と結合して酸化鉄となり、自由になった炭素原子が浮遊物の分子間結合を増強し、外界のエネルギーを得て有機物質が生成される。
 約38億年前の地球の表面は酸化物や硫化物や炭酸塩などで覆われており、大気には多くの二酸化炭素ガスがあったが、海ができ、その海水温度もある程度の温度以下になり、大気中の二酸化炭素が海水に溶けるようになっていた。そのような状況において火山の噴火が頻繁に発生して多量の鉄の微粒子が放出されて、縞状鉄鉱床が形成された。他方、大気中の二酸化炭素の分子が頻繁に水面に衝突した。それが、分子間結合で構成された浮遊物に含まれた。浮遊物は水面で累積される。そこに、紫外線等によるエネルギーが外部から供給されて、浮遊物の中で有機分子の組織も形成された。やがて、それらが海底に沈殿して堆積した。こうして、大気の二酸化炭素に由来す12C炭素同位体が西グリーンランドの堆積岩に取り込まれた。
[参考文献]
[1] Rosing M. T. (1999). 13C-Depleted Carbon Microparticles in >3700-Ma Sea-Floor Sedimentary Rocks from West Greenland, Science Vol.283 No.5402 pp.674-676.
[2] Karasawa S. (2010). Inorganic production of membranes together with iron carbide via oxidization of iron in the water that includes carbon dioxide plentfully, AbSciCon 2010, #5168.

[写真1]炭酸水に鉄の微粉末を加えると気泡が発生し浮遊物ができて集積される様子(左:作りおいた古いメッシュ#300の鉄の微粉末、中央:作って新しいメッシュ#300の鉄の微粉末、右:やや粒が大きいメシュ#200の鉄の粉末)