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[BGM22-11] 下北八戸沖の夾炭層を含む海底下深部堆積物中の酢酸酸化活性
2012年に統合国際深海掘削計画第337次航海(IODP、Expedition 337)により下北八戸沖で、海底下約2kmに埋没した未成熟の石炭層に関連する炭化水素循環システムと微生物学的・地球化学的プロセスを明かにすることを目的として地球深部掘削船「ちきゅう」によりC0020サイトでライザー掘削が行われた。未成熟の石炭(褐炭)はその熟成の過程で、有機酸や炭化水素などの有機物を溶け出させ、それらが微生物の代謝活動を支えていると考えられている。 本研究では掘削された堆積物コア試料(~海底下2466m)に、14Cトレーサー(sodium [14C]-bicarbonate、[2-14C]-acetate)を添加し、酢酸開裂型メタン生成活性と酢酸酸化活性を測定した。酢酸開裂型メタン生成活性は、海底下約2kmの褐炭層より浅部で0.2?4 pmol cm-3 d-1であり、最も高い活性は海底下1990mの褐炭層試料で検出された。褐炭層以深では、0.1?0.2 pmol cm-3 d-1程度とより低い活性を示した。酢酸のメチル基に14Cでラベルした[2-14C]-acetate を添加した試料中の14C-CO2の生成量から見積もられた酢酸酸化活性は、1800 mbsfで最も高く(150 pmol cm-3 d-1)、深度の増加と共に低くなり、夾炭層以深では検出限界以下となった。1800 mbsf付近では海緑石が多産することから、この深度での高い酢酸酸化活性には、海緑石に含まれる酸化態の鉄(Fe(III))が電子受容体として寄与している可能性が示唆される。