日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT23_30AM1] 地球史解読:冥王代から現代まで

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 411 (4F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)、座長:佐藤 峰南(九州大学大学院理学府)

09:30 〜 09:45

[BPT23-03] 中国南部のエディアカラ系炭酸塩岩に見られる天水続成の証拠とガスキエス氷期での陸上露出

*古山 精史朗1国光 陽子1狩野 彰宏1 (1.九州大学)

キーワード:南中国, エディアカラ系, 天水続成, ガスキエス氷期, 炭素同位体

炭素同位体比は大気・海洋の環境変化を反映して汎世界的に変動する.中でも地球史を通じて複数回生じた無機炭素同位体のエクスカーションは,生物の進化や絶滅などのイベントと同調しているため,その原因が活発に研究されている (e.g. Grotzinger et al., 2011). 多細胞動物が大きく進化したエディアカラ紀 (635-542 Ma)においても,少なくとも2回の負のエクスカーションが記録されている (Fike et al., 2006; Sawaki et al., 2010).南中国に分布するエディアカラ系堆積岩である揚子プラットフォームは変成度が低く,解像度の高い無機炭素同位体比プロファイルが多く報告されている (e.g. Jiang et al., 2011). これらは負のエクスカーションを引き起こしたエディアカラ紀の特異的な古海洋環境と海洋酸化の影響を反映していると考えられるが,その原因は十分に解明されていない.そこで本研究では,約20パーミルに達する無機炭素同位体値(全岩)の変動幅が記録される (e.g. Kunimitsu et al., 2011) 湖南省北西部Yangjiapingセクションについて,ストロンチウム同位体及びセメント部分の無機炭素・酸素同位体を測定し,その原因を探るとともに古環境について考察した.Yangjiapingセクションは層厚約470mで,下位から氷礫岩で構成されるNantuo層,炭酸塩岩・黒色頁岩・リン酸塩岩・チャートで構成されるDoushantuo層,炭酸塩岩とチャートで構成されるDengying層の順に露出する.Kunimitsu et al. (2011) は,全岩の無機炭素同位体変動に基づきDoushantuo層を下位からUnit 1-Unit 3に区分しており,変動幅の大きな無機炭素同位体変動はUnit 3に記録される.Unit 2上部?Unit3およびDengying層の粗粒炭酸塩岩試料についてカソードルミネッセンス法を用いて形成順序を調べ,各段階の無機炭素・酸素同位体値を測定したところ,Unit 2上部-Unit 3下部およびDengying層では,全岩とセメント部分の無機炭素・酸素同位体値に大きな差は見られなかったが,Unit 3中部?上部にかけてセメントの無機炭素同位体が25パーミル,酸素同位体が7パーミル程度の全岩の値より低いことが分った.また,ストロンチウム同位体値は0.7079-0.7105をとり,Unit 3とDengying層中部-上部にかけて値の上昇が見られた.セメント部分の無機炭素・酸素同位体分析から,YangjiapingセクションのDoushantuo層Unit 3に見られる全岩の無機炭素同位体変動は,天水続成の影響を受けてできた二次的な同位体値の付加によるものである.Unit 2上部-Unit 3における炭酸塩岩の岩相は極浅海の環境を示しており,海水準低下により堆積場は陸上に露出したと思われる.この時,粒子間に存在していた有機物は酸素に富む天水続成環境で酸化され,続成水の炭素同位体比を著しく低下させた.またUnit 3におけるストロンチウム同位体の上昇傾向は陸源フラックスの増加を示しており,その原因はエディアカラ紀中頃(580 Ma)に起きたガスキエス氷期にともなう大陸風化の強化である可能性が高い.本研究の分析結果から,ガスキエス氷期が起きた時期の揚子プラットフォームの極浅海域は陸上に露出したことが判明した.