日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 B (地球生命科学) » B-PT 古生物学・古生態学

[B-PT23_30PO1] 地球史解読:冥王代から現代まで

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)

18:15 〜 19:30

[BPT23-P03] 『隠された貯蔵庫』の主成分元素組成と生成条件

*近藤 望1小木曽 哲1 (1.京都大学大学院人間・環境学研究科)

キーワード:隠された貯蔵庫, 初期地殻, 142Nd/144Nd

マグマオーシャンの固結とそれに続くマントル-地殻分化は、固体地球の進化や水圏の進化に大きな影響を与えた可能性がある。しかし、その詳細は未だ不明な点が多い。先行研究で、コンドライト隕石と地球の地殻・マントルを合わせた組成(BSE)の間に142Nd/144Nd値の差があることが報告されているが、これはケイ酸塩に不適合な元素に富んだ貯蔵庫が初期地球で形成されたのち地球内部に隠されたか、地球外部に失われたことに由来するものと示唆されている。この『隠された貯蔵庫』の組成や起源については様々な説が提案されてきているが、それらは主成分元素組成には焦点を当ててこなかった。しかし、主成分元素組成は隠された貯蔵庫の密度を知り、それが果たして上昇して初期地殻を形成したのか、それともマントル中で沈降したのかを調べる上で非常に重要である。よって本研究では、この隠された貯蔵庫の主成分元素組成を求めるために、過去と現在のマントルの142Nd/144Nd、143Nd/144Nd系の制約の下、隠された貯蔵庫をつくる融解条件を推定した。
Solomatov and Stevenson(1993)によれば、固結していくマグマオーシャン中で、メルトが分離するのは圧力10GPa以下の上部マントル浅部である可能性が高い。この推定に基づいて、本研究では隠された貯蔵庫は10GPa以下で生成されると仮定した。そしてこの仮定のもと、コンドライト隕石とBSEの間の142Nd/144Nd値の差に整合的なSm/Nd比を計算し、このSm/Nd比を満たす部分融解度を推定した。この計算により、部分融解度は1 GPaで<5.2%、3 GPaで<3.2%、7 GPaで<1.4%となった。そしてこれらの部分融解度と先行研究の実験データを用いて隠された貯蔵庫の主成分元素組成を推定すると、それぞれ不適合元素に富んだソレアイト、ピクライト、コマチアイトとなった。
過去のマントルが現在よりも高温だったと考えると、マントルはより深部で融けていたことになる。一方で、本研究によって部分融解度は小さいと推定されている。マントル深部で融解が起こり、かつ小さな部分融解度となるには、リソスフェアが厚いことが必要である。マントルが高温の時に厚いリソスフェアがある可能性は、Korenaga(2009)によって示唆されている。これらの結果から、隠された貯蔵庫の主成分元素組成は微量元素に富んだピクライトからコマチアイトである可能性が高い。

Solomatov and Stevenson(1993),Journal of Geophysical Research, 98, 5407-5418
Korenaga(2009), Geophysical Journal International, 179, 154-170