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[BPT24-04] 白亜紀のウミガメ化石から発見した化学合成群集:竜骨群集と鯨骨群集をつなぐもの
キーワード:ウミガメ, 化学合成群集, 竜骨群集, 鯨骨群集
深海の熱水やメタン湧水に成立する化学合成生態系は、鯨類などの大型脊椎動物遺骸にも成立する.シンカイヒバリガイやチューブワームなどの化学合成動物の遺伝子解析結果によると,これらの分類群は脊椎動物遺骸環境への適応を経て,深海の熱水・メタン湧水環境への適応を果たしたとされる(「進化の飛び石仮説」Distel et al., 2000).新生代では鯨類が,中生代には長頸竜類(首長竜類)の遺骸に化学合成生態系が成立していたことが知られている(鯨骨群集,竜骨群集と呼ばれている).中生代には首長竜以外にも多数の海生爬虫類が繁栄していたが、首長竜以外の海生爬虫類遺骸にも化学合成生態系が成立していたのか不明であった. 今回,北海道中川町仁尾川の上部白亜系カンパニアン階から産出したオサガメ科のウミガメ類(Mesodermochelys sp.)の背甲からハイカブリニナ科腹足類,ハナシガイ類(二枚貝)が共産した.いずれもメタン湧水群集や鯨骨,竜骨群集などの主要な分類群であり(Jenkins et al., 2007; Kaim et al., 2008, 2009など),ウミガメ類の遺骸にも化学合成生態系が成立していた可能性が高い. 今回の発見は海生爬虫類が繁栄した白亜紀において,首長竜以外の海生爬虫類にも化学合成生態系が成立していたことを意味する.ウミガメ類は白亜紀末の大量絶滅を逃れた稀な海生爬虫類の一つである.したがってK-Pg境界を生き延びたウミガメ類の遺骸に成立する化学合成生態系が、中生代の竜骨群集と新生代の鯨骨群集をつないでいた可能性がある.