18:15 〜 19:30
[BPT24-P01] 室戸半島四万十帯に分布するノジュールの産状と内部構造
キーワード:ノジュール, 四万十帯, 泥岩層, 黄鉄鉱, 生痕化石
深海底面上に近年多く発見されているノジュールは、陸上の露頭では母岩から容易に分離できるコンクリーションとして観察される。ノジュールは生痕化石や体化石が核となり、その周囲に鉱物が凝縮・沈殿して形成されると考えられているが、具体的な形成過程は解明されていない。室戸半島は、四国東部第三系四万十帯(23-56 Mya)に属しており、地域住民に「鉄丸石」と呼ばれているノジュールが見つけられている。これらのノジュールは、現在も南海トラフで進行している付加体形成プロセスと同じプロセスを経て形成されたと予想され、現在の深海底面で起きている現象を推測できる点で重要である。本研究では、鉄丸石の分布・産状・形状・内部構造の分析を行い、ノジュールの形成プロセスの推定を行った。
室戸半島の吉良川~椎名漁港までの海岸線沿いにノジュールの分布を調査した結果、ノジュールは室戸半島全域に分布することがわかった。ノジュールが集中している露頭としていない露頭があり、集中している露頭では、100 m2の範囲内に50個以上のノジュールが観察できた。ノジュールが集中していた露頭は、室戸層の吉良川河口・平尾、津呂層の奈良師・ホテル明星前・六々谷、日沖メランジュの三津の6カ所に見つかった。室戸半島の露頭は、砂岩層・泥岩層・砂泥互層が特徴的であるが、ノジュールが見つかったのは主に泥岩層の中であった。砂泥互層においても、そのうちの泥岩層中に堆積面に平行な方向に長く伸びた形状で露出していることが多かった。泥岩層に露出しているノジュールの中には、泥の表面より突き出したノジュールの上面に沿うように砂岩層が曲がっているように見えるものもあった。よって、ノジュールの産出には泥岩層が重要だと考えられる。また、ノジュールの分布をLaughland & Underwood(1993)の温度構造と比較した結果、温度構造との相関は認められず、ノジュールの分布は主に岩相に支配されているように思われた。
ノジュールの産出数が多かった6か所で、50個ずつノジュールの大きさとアスペクト比を計測した。アスペクト比とは、ノジュールの形状を楕円とみなして長軸の長さと短軸の長さとの比率である。ノジュールの形状は、主に長軸方向の長さが1.2-25 cm、短軸方向の長さが1-18 cmであり、各地点ともアスペクト比が1.3-1.4となり、球型に近い形状であることが分かった。しかし、室戸層の平尾付近の露頭だけは異なっており、短軸の長さが4cm以下のものはすべてアスペクト比が3以上であった。これは、元々ほぼ同じ大きさだったノジュールが変形したと考えれば説明できる。この地点では、高いビトリナイト反射率が報告されている(Laughland & Underwood、1993)。
18個のノジュールを切断し内部断面を観察したところ、ノジュールの内部は大部分が母岩とよく似た黒色又は褐色のマトリックスで構成されていた。直径約8 cmのノジュールの中央部に長さ0.4 cmの不定形の小さい白いコアを観察できた。また、複数のサンプルに細粒の黄鉄鉱が散在しているのを観察することができた。黄鉄鉱の粒子は、サンプルによっては見られないこともあった。黄鉄鉱の形状は、主に丸みを帯びた三角形や四角形であり、粒の大きさは一辺の長さが50-450 μmである。観察できた黄鉄鉱の形状より、無機的に形成されたものと推測された。マトリックスには黒色と褐色の部分が観察された。それぞれ部分が、幅1-2 mmの帯状でノジュールの外側からノジュールの中心軸に向かって湾曲しながら伸びている様子が観察できた。エネルギー分散型X線分光分析(EDS)を用いて化学分析を行った結果、黒色部と褐色部では含まれている鉱物の種類が異なることが分かった。即ち、主に方解石や石英から構成される部分とアルミニウム・マグネシウム・鉄が多く含まれる部分とがあり、特に後者は粘土鉱物と思われる。
室戸半島の四万十帯ではノジュールが泥岩層に多く露出していることが明らかとなり、ノジュールは静かな深海底面に堆積した泥の表面付近で形成されたと考えられる。ノジュールの断面に小さいコアを観察できたことから、当時深海底で生息していた蠕虫様生物の生痕が核となって形成されたものである可能性が高い。生物蹂乱によって環境水中の物質移動が促進された結果、その周囲の泥において選択的にコンクリーション化が起きたと考えるのが妥当である。一部の露頭では堆積面と平行に伸長したノジュールだけが見られたが、変形前のノジュールがほぼ同じ形状であったと仮定すれば、今後これらのノジュールの形状が付加体形成による変形の指標となる可能性がある。
室戸半島の吉良川~椎名漁港までの海岸線沿いにノジュールの分布を調査した結果、ノジュールは室戸半島全域に分布することがわかった。ノジュールが集中している露頭としていない露頭があり、集中している露頭では、100 m2の範囲内に50個以上のノジュールが観察できた。ノジュールが集中していた露頭は、室戸層の吉良川河口・平尾、津呂層の奈良師・ホテル明星前・六々谷、日沖メランジュの三津の6カ所に見つかった。室戸半島の露頭は、砂岩層・泥岩層・砂泥互層が特徴的であるが、ノジュールが見つかったのは主に泥岩層の中であった。砂泥互層においても、そのうちの泥岩層中に堆積面に平行な方向に長く伸びた形状で露出していることが多かった。泥岩層に露出しているノジュールの中には、泥の表面より突き出したノジュールの上面に沿うように砂岩層が曲がっているように見えるものもあった。よって、ノジュールの産出には泥岩層が重要だと考えられる。また、ノジュールの分布をLaughland & Underwood(1993)の温度構造と比較した結果、温度構造との相関は認められず、ノジュールの分布は主に岩相に支配されているように思われた。
ノジュールの産出数が多かった6か所で、50個ずつノジュールの大きさとアスペクト比を計測した。アスペクト比とは、ノジュールの形状を楕円とみなして長軸の長さと短軸の長さとの比率である。ノジュールの形状は、主に長軸方向の長さが1.2-25 cm、短軸方向の長さが1-18 cmであり、各地点ともアスペクト比が1.3-1.4となり、球型に近い形状であることが分かった。しかし、室戸層の平尾付近の露頭だけは異なっており、短軸の長さが4cm以下のものはすべてアスペクト比が3以上であった。これは、元々ほぼ同じ大きさだったノジュールが変形したと考えれば説明できる。この地点では、高いビトリナイト反射率が報告されている(Laughland & Underwood、1993)。
18個のノジュールを切断し内部断面を観察したところ、ノジュールの内部は大部分が母岩とよく似た黒色又は褐色のマトリックスで構成されていた。直径約8 cmのノジュールの中央部に長さ0.4 cmの不定形の小さい白いコアを観察できた。また、複数のサンプルに細粒の黄鉄鉱が散在しているのを観察することができた。黄鉄鉱の粒子は、サンプルによっては見られないこともあった。黄鉄鉱の形状は、主に丸みを帯びた三角形や四角形であり、粒の大きさは一辺の長さが50-450 μmである。観察できた黄鉄鉱の形状より、無機的に形成されたものと推測された。マトリックスには黒色と褐色の部分が観察された。それぞれ部分が、幅1-2 mmの帯状でノジュールの外側からノジュールの中心軸に向かって湾曲しながら伸びている様子が観察できた。エネルギー分散型X線分光分析(EDS)を用いて化学分析を行った結果、黒色部と褐色部では含まれている鉱物の種類が異なることが分かった。即ち、主に方解石や石英から構成される部分とアルミニウム・マグネシウム・鉄が多く含まれる部分とがあり、特に後者は粘土鉱物と思われる。
室戸半島の四万十帯ではノジュールが泥岩層に多く露出していることが明らかとなり、ノジュールは静かな深海底面に堆積した泥の表面付近で形成されたと考えられる。ノジュールの断面に小さいコアを観察できたことから、当時深海底で生息していた蠕虫様生物の生痕が核となって形成されたものである可能性が高い。生物蹂乱によって環境水中の物質移動が促進された結果、その周囲の泥において選択的にコンクリーション化が起きたと考えるのが妥当である。一部の露頭では堆積面と平行に伸長したノジュールだけが見られたが、変形前のノジュールがほぼ同じ形状であったと仮定すれば、今後これらのノジュールの形状が付加体形成による変形の指標となる可能性がある。