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[BPT25-04] 白亜紀温室地球の初期寒冷化のカギ:北太平洋縁辺域のシャンパーニュ階ーマーストリヒト階泥質堆積物
キーワード:白亜紀, 温室地球, 寒冷化, カンパニアン, マーストリヒシアン
北太平洋沿岸域には日本,極東ロシア,およびカナダ・アメリカの太平洋岸という広い範囲にわたって白亜紀の陸源堆積物が分布している.複数のセクションで生層序や化学層序の研究が進められ,アプト階からマーストリヒト階に対比されている.大型化石や微化石の生層序に加え,炭素同位体比(δ13C)層序はこれらの層位範囲の中で重要な層準-例えばOAE2層準-を特定することに貢献してきた.泥が卓越するが故,一部のセクションでは保存が極めて良好であり酸素同位体比の測定が可能である炭酸塩化石が産出する(Moriya et al., 2003). 本研究ではシャンパーニュ階からマーストリヒト階について検討する.この範囲の炭素同位体比層序については,最近欧州を中心に総括がなされ(Voigt et al., 2012),汎世界的な寒冷化の初期フェーズが記録されていることがわかってきた (Moriya, 2011; Friedrich et al., 2012).北部「古太平洋」は莫大な熱容量を持っていたと考えられ,その古海洋環境は,この時代以降の温室地球から氷室地球への転換に関する環境変化を理解するうえで重要な視点を供給すると考えられる. 北海道とサハリンに分布する蝦夷層群とその相当層,およびカナダ太平洋岸(ブリティッシュコロンビア)に分布するナナイモ層群について検討を進めている.蝦夷層群からは,明瞭な1.4-2‰の負のδ13Cのエクスカーションが見られている.サハリンでは,シャンパーニュ期/マーストリヒト期境界は生層序と古地磁気によって時代を固定することで炭素同位体比のシャンパーニュ階/マーストリヒト階境界事件(CMBE)とその付随イベントが同定されている. ナナイモ層群の古地磁気と生層序(Haggart et al., 2011; Ward et al., 2012)から,δ13C層序におけるCMBEが推定される相違範囲を中心に検討を進めたところ,これに対応する1.5‰の負のエクスカーションがノースアンバーランド層上部に確認された.このことにより,サハリン,北海道,およびブリティッシュコロンビアのCMBE層準を高精度で対比することが可能になった.