日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04_29AM1] 高等学校の地球惑星科学教育

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:45 423 (4F)

コンビーナ:*畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

09:45 〜 10:00

[G04-02] 大学による高校課題研究支援からみる高校地学:分野横断と統計学

久利 美和1、*村上 祐子2 (1.東北大学災害科学国際研究所、2.東北大学大学院文学研究科)

キーワード:高校地学, 確率統計, 情報検索, 情報吟味

【高校課題研究】高等学校では、平成25年度より新学習指導要領の本格実施が始まった(数学及び理科は平成24年度入学生から)。すでに、理数科、SSH・SPPプログラムを通じた課題研究が多くの学校で実施されている。これらの実施には、大学や研究機関との連携が推奨されており、多くの大学関係者が出前授業等に加えて、実習の提案等も行なっている。多くの場合、大学研究者はそれぞれの専門に応じて支援を行なうが、その過程でいくつかの課題が生じてきた。また、JSTの未来の科学者養成講座、次世代科学者養成講座等、大学を拠点に高校生または小中学生の課題研究を支援する事業も展開されている。【科学と社会・分野横断】SSHの採択校の増加とともに、テーマの多様性のひとつとして、「科学と社会」の関連をテーマとする事例が増えてきた。特定の専門分野に依存しない分野横断型の課題が増える中で、科学広報や国際交流の視点から著書らも高校課題研究のいくつかに関わることとなった。【共通基礎能力】最初に取り組んだのは、図書館と連携した情報検索演習である(平成21年度)。より、信頼度の高い情報へのアクセス習慣を目的としたものである。次が、情報の吟味と議論の練習としてのクリティカル・シンキングの導入である。実際には、同じ母集団からの統計リスクと相対リスクの算出とその場合の数値の一人歩きの事例等、統計学に基づく内容の解説を中心とした。【科学の不確実性への理解の事例としての地学】2011年の東日本大震災以降、科学と社会の関係の見直し、科学的な不確実性の理解の増進などが「科学技術白書」に盛り込まれ、東北地方では地域に根ざした科学的な課題として関連テーマが各種あつかわれた。とくに、起因となった地震の発生確率等、確率算出の根拠や予測への展開、さらに2次的な災害としての津波の発生確率と人工物の強度設計との比較等、課題解決のみならず、課題発見段階で確率の知識が必要となる場面が増えた。地震に限らず、自然災害については、確率の知識とスキルはすでに必須となった。一意の回答を得にくい地学分野は高校理科の範疇においてあつかいにくいとされる要因となっているが、科学の不確実性や分野横断型の思考を行なう上で優位な分野である。分野横断型の人材育成の視点から、地学と統計学を基礎とした新科目の開発が、有効である。