日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG36_29PM2] 原子力と地球惑星科学

2014年4月29日(火) 16:15 〜 17:45 411 (4F)

コンビーナ:*梅田 浩司(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、吉田 英一(名古屋大学博物館)、座長:吉田 英一(名古屋大学博物館)

17:15 〜 17:30

[HCG36-08] 高速増殖原型炉もんじゅ敷地内破砕帯等の追加地質調査の現況について

*石丸 恒存1島田 耕史1佐々木 亮道1田中 遊雲1宮崎 真之1安江 健一1丹羽 正和1末岡 茂1梅田 浩司1池田 真輝典1 (1.(独)日本原子力研究開発機構)

キーワード:高速増殖原型炉もんじゅ, 破砕帯調査, 江若花崗岩, 原子力規制委員会

経緯:(独)日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(以下,「もんじゅ」)においては,平成25年4月30日に敷地内破砕帯の追加地質調査の報告書を取りまとめて,原子力規制委員会(以下,「規制委員会」)に提出した。6月13日には規制委員会の有識者事前会合が開催され,当機構は提出した報告書の要点について説明を行い,7月17日-18日,26日-27日の2回に分けて有識者による現地調査が行われ, 8月26日に第1回評価会合が開催された。評価会合での議論を踏まえ,9月25日には規制委員会より更なる追加調査計画の策定の指示が発出され,当機構は10月3日に調査計画書を規制委員会に提出した。その後,当機構は11月29日に11月中旬までに得られた成果を「1次とりまとめ報告」として規制委員会に提出し,平成26年3月中目途に「全体とりまとめ報告」を提出することとした。追加調査の概要:平成25年9月25日の規制委員会からの指示事項は,①もんじゅ敷地内断層の活動性を把握するため,剥ぎ取り調査地点の基盤岩中の断層において,変位マーカーの有無や形成年代の把握及び破砕帯内物質を対象とした年代測定等を実施すること,②もんじゅ敷地近傍のL-2リニアメント及びその延長部等の評価についてデータ拡充を行うため,破砕帯の分布・性状,被覆層との関係及び被覆層の堆積年代(14C年代測定や火山灰分析等)の調査を実施すること,③活断層である白木-丹生断層周辺及びL-2リニアメント延長等における海域の地質構造・活動性を把握するため,周辺海域における海上音波探査及び沿岸部における地形・地質調査等を実施すること,の大きく3点である。この指示事項を受ける形で調査計画を策定し,剥ぎ取り調査範囲を拡充しての追加調査や山地/段丘境界における詳細な地形・地質調査,沿岸海域での海上音波探査等を追加で実施した。追加調査結果の概要:もんじゅ敷地のある敦賀半島北部の基盤岩類は白亜紀後期~古代三紀の江若(こうじゃく)花崗岩より構成される。敷地内破砕帯の性状調査では,原子炉建物基礎岩盤部で最長のa破砕帯北方延長方向において,剥ぎ取り調査の範囲を拡充し,2系統(α系,β系と呼ぶ)の複数の破砕帯の切断関係や変位量を把握し,β系よりもα系が相対的に新しい構造であることを確認した。α系破砕帯は左横ずれセンスの幅数cmの粘土脈で,幅は不規則に変化し粘土細脈が網目状に入っている。また,α系破砕帯により変位を被る玄武岩岩脈のK-Ar年代は約19Maであった。この他,花崗岩や破砕帯内物質のジルコンやアパタイトを対象にFT法やU-Pb法による年代測定を実施し,花崗岩と破砕帯の熱史を検討した。これまでの調査結果からは,平成25年4月末のとりまとめ報告の結果と同様に,敷地内破砕帯が活動的であることを示す証拠は乏しく,これら破砕帯は,花崗岩が削剥により浅部に到達する以前に深部の熱水環境下で形成された小規模な古い地質構造である可能性が高い。山地/段丘境界における地形・地質調査では,境界付近に沿った走向の破砕帯は確認されず,花崗岩を覆う堆積層の火山灰分析と14C年代測定から,一部の露頭で約4~5万年前の堆積物の分布が確認できた。沿岸海域での海上音波探査では,平成25年12月に海底地形調査と合わせて実施し,データの解析を進めている。なお,既存の音波探査記録の各種データ処理を行った結果,既往検討結果の修正を要するような新たな情報は認められなかった。今後の予定:「全体とりまとめ報告」の提出以降も,敷地内の地質・地盤に係る情報蓄積やこれまでの調査結果の信頼性を更に高めるため,自主的な調査を継続する。また,上載地層法が適用できない断層破砕帯の活動性の評価手法等に関する基礎的研究を継続する。