日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG37_30PM1] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 421 (4F)

コンビーナ:*山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、藤野 滋弘(筑波大学生命環境系)、清家 弘治(東京大学大気海洋研究所)、座長:藤野 滋弘(筑波大学生命環境系)

15:30 〜 15:45

[HCG37-06] 石英のESR 信号強度と結晶化度に基づく揚子江流出堆積物の混合比推定

*齋藤 京太1多田 隆治1Zheng Hongbo2入野 智久3Chao Luo4Mengying He4Wang Ke3鈴木 克明1 (1.東京大・理・地惑、2.Nanjing Normal University、3.北大・地球環境科学、4.Nanjing University)

中国を流れる揚子江は全長6300km,流域面積は約200万キロ平方メートルにおよぶ東アジア最大の河川である.流域の雨季は夏季モンスーンの発達に伴う前線によりもたらされ,前線が流域のどこで停滞するかにより降水域が変化する.従って,夏季モンスーン降水の長期的な挙動を明らかにするには,1地点での降水の時系列変動だけではなく,空間分布の変動も知る必要がある.気象観測記録以前の降水量の時空変動を復元するには,古気候記録を用いることとなる.揚子江においては流出する堆積物の95%以上は懸濁粒子であり,流域の降水量と水流出量,水流出量と堆積物流出量の間には,それぞれ正の相関がある.そこで,河口部における堆積物の供給源変化は降雨地域の変動を反映し,堆積物中の砕屑物の供給源とその変動の復元から,流域内での降水分布とその変動が推定できると期待される.そして,そのためには供給源を推定する指標が必要となる.本研究では,揚子江流域における過去の降水分布の時間・空間変動を石英のESR信号強度を用いて復元するための基礎として,1)おもな支流から流出する石英粒子のESR信号強度を分析して,それが流域の基盤岩の年代を反映することを確認する.そしてその結果を基に,2)これらの値が現在の本流における懸濁物の混合を説明しうることを検証した上で,3)特定の支流域での増水を仮定し,どの程度の規模の増水であれば河口におけるESR値の変化として検出可能であるか,堆積物の収支計算の方法も含めて議論する.揚子江の主要な支流から採取した堆積物を分析した結果,石英のESR信号強度により各支流に由来する砕屑物粒子が区別され,流域の基盤年代から推定されるESR値と整合的であることが示された.この結果を基に,支流のESR値を端成分とし,各支流から本流への砕屑物流入量を元に河口部の堆積物におけるESR値を推定したところ,実際に本流の堆積物を分析して得られた値と整合的な結果が得られた.よって石英のESR信号強度は堆積物の混合比を推定するための指標として用いうることが示された.次に,上流部または中流部の特定の支流での堆積物流出量の増加を仮定して河口部のESR値を計算し,河口におけるESR値の変化として検出しうる増水の規模を推定した.その結果,平常時の5倍に相当する懸濁物が上流部あるいは中流部から流出した場合,河口部で採取される懸濁物のESR値の変化としてその供給源の検出が可能であると考えられる.