日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG37_30PM2] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:30 421 (4F)

コンビーナ:*山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、藤野 滋弘(筑波大学生命環境系)、清家 弘治(東京大学大気海洋研究所)、座長:山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)

16:15 〜 16:30

[HCG37-08] 調査困難箇所のための水底調査法の開発と海底・湖底地すべりの調査

*山崎 新太郎1 (1.北見工業大学)

キーワード:魚群探知機, 海底地すべり, 湖底地すべり, 浅深測量, サイドスキャンソナー

地すべりや火山,活断層など災害と関連する地形は湖底や海底にも存在する.これらの地上から不可視の地形を把握することは将来的な災害の可能性を考える上でも重要である.一方で,水底の地形は従来,高価で重量のある装置でしか詳細に調査することができなかったために,その導入が困難であった.しかしながら,近年,飛躍的に高性能化した安価で小型の魚群探知機を利用して,浅海域から数百メートルにおよぶ海底までの地形調査が可能になりつつある.このような装置をゴムボートなどの小型船に搭載すれば,座礁の危険性のためにこれまで調査が極めて困難であった0.5 m~2 m程度の浅い水域や沿岸域でも調査が可能であるため,浅海域では従来機以上の汎用性があると言えよう.また,音響反射強度を面的に把握するサイドスキャンソナーに相当する装置を用いれば,底質や構造物などの存在も判定可能である(山崎ほか,2013).筆者らはこの方法を用いて,これまでに調査がほとんどなされていなかった,湖や海岸の浅海域の湖底や海底地すべり地形の調査に乗り出している.本発表では,筆者らの調査例と共に,その有用性について紹介する.一つは,北海道の屈斜路湖の調査であり,屈斜路湖では,長さ1kmにおよぶ湖底地すべりや重力性の陥没地形を発見した.また,1923年の関東大震災で発生し,海中にその一部が没した根府川地すべりの調査を行い.地すべりによって流された海中遺構の分布やその形状を正確に把握することに成功した.特に,屈斜路湖では1923年にM6.0程度の規模の地震(屈斜路地震)に伴って津波が発生しており,この湖底地すべりと津波との関係も議論がされ始めている.最近では,日本各地の大縮尺の海図が整備されてきており,その等深線図には多数の箇所に陥没や小規模な高まりといった地形的異常が存在する.これらの多くは,海底もしくは湖底の地すべり等によって形成された可能性がある.筆者らの海底・湖底地すべりの調査は,いずれも既往海図において地形的異常箇所に注目し,以上の装置によって精密に調査して明らかになったものである.つまり,これまで考えられているよりも,浅海域や湖沼では,高頻度に海底・湖底地すべりが発生している可能性があり,一部は地震とともに発生して局所的な津波を発生させた可能性がある.水域調査装置の導入が容易になったことで,これらの海底・湖底地すべり調査を一気に進めることができる可能性がある. 文献山崎新太郎・原口強・伊藤陽司(2013)レジャー用魚群探知機を利用した水底地形調査 応用地質 54(5), 204-208, 2013