日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS06_2PO1] Natural hazards: impacts on society, economy, and technological systems

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*PETROVA ELENA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)

16:15 〜 17:30

[HDS06-P01] 震災によって作られた俳句の理解に関する研究

*青木 陽二1 (1.放送大学学生)

キーワード:東日本大震災, 俳句, 理解と感動

震災によって作られた俳句の理解に関する研究
青木陽二(放送大学学生)・千田壮介(蔵前俳句会)・ジャンボール絹子(国際俳句交流協会翻訳委員)・藤田均(青森大学教授)
2011年3月11日に東日本は震災と福島原子力第一発電所の被害により、大きな影響を受けた。この震災の後に多くの俳人が、地震と原子力発電所の事故による影響を俳句に詠んだ。これらの俳句のうち、雑誌に発表された234句を収集しホームページに公表したものをデーターとすることにした。これをコピーし、俳人と一般人の19人に見せ、理解できる句と、感動した句を選んでもらった。合計で2354句が選ばれた。一人平均で124句が選ばれた。
俳句に対する理解は平均10.1人で、8人に最大値を持ち、13人にもう一つの山を持つ2峰型の分布をなした。半数以上の人が理解できた句は132句(56.4%)と比較的多く、俳句は現在でも日本人に理解できる心の伝達手段であることが分かった。また、感動した句は0に最大値を持ち、平均1.4人で、人数の増加に伴い減少する分布を示した。2人以上の人が一致して感動した俳句は91句(38.9%)であった。多くの人に均等に感情を伝えるには、難しい手段であることが分かった。評価した人数と感動した人数の相関を取ると、0.515で、弱い関連を示した。このことは多くの人が理解できた俳句が、感動を与える俳句ではないことを示している。
俳句会での評価方法に従い、理解できた俳句に1点、感動した句に2点を与え、総合点を計算した。総合点と感動した人数の相関は0.731を示し、少し強い関連が得られた。これは、2点と言う得点加算の結果である。それほど強い関連でないことから、感動した句には個人差が影響し、評価者間で一致しなかったことを示す。
回答者を要因にして主成分分析を行なうと、固有値1.0以上で6軸が得られた。このことは回答者による評価の違いが多く有ることを示している。最大固有根は最大の説明力を持つ軸であり、評価の厳しさを示すことが分った。残りの5軸は俳句に対する評価者の好みが現れたものと思われる。
最も評価が高かった俳句は21点を獲得し以下の3句であった。
①泥の遺影泥の卒業証書かな 曽根新五郎
②淡雪や瓦礫めくりて母探す 柏原眠雨
③泣きはらす子らにひかりあれ卒業歌 上郡長彦
①は津波に拠って泥だらけになった死んだ人の写真と、死んだ人の卒業証書が被災地に散らばっている光景であった。
②は地震で壊れた自宅や近所を、瓦礫を除去しながら、行方不明の母を捜すところへ、雪が降ってきた情景であった。
③は卒業を迎えた生徒が泣きながら、卒業歌を歌っているので、この子らに光あれと祈る句である。
何れも悲しさに心を打たれたものと思われる。
参考文献
震災俳句:http://blog.goo.ne.jp/humon007/e/fcc6b3e8f8dc3ca1cbc6a2177d6d0637
謝辞:俳句の調査には蔵前俳句会(東京工業大学)とブルーリッジ俳句会(バージニア州ロアノク市)の協力を得た。