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[HDS27-07] 「みちびき」と「きく8号」を用いたGPS津波計の沖合展開
キーワード:QZSS, ETS-VIII, GPS津波計, PVD法, PPP-AR法
東日本大震災が投げかけたGPS津波計への開発課題は,さらなる沖合への展開が可能となるGPS測位法の改良と,被災してもリアルタイムデータを継続的に発信できる機能の確保であった。測位法の課題解決には,離岸距離の影響を受けない精密測位法を必要とし,海上のブイにおいて単独で精密に測位できる方法を確立することであった。波浪程度の短周期の海面変動にはPVD(Point precise Variance Detection method)法1)を適用し,津波や潮汐の長周期変動にはPPP-AR(Point Precise Positioning method with Ambiguity Resolution)法2)を適用することが有効であることを,室戸岬沖35kmに設置したGPS津波計実験機で実証してきた(http//tsunamigps.com)。また,技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」を用いて,ブイ上でPVD法によって求めた波浪データを陸上に送る実験を行い,洋上ブイから衛星通信によってデータを伝送する技術的見通しも得てきた3),4)。 沖合展開に制限のないGPS津波計とするには,PPP-AR法をブイ上で機能させる必要がある。このために精密暦(時計と軌道の精密な情報)をブイに送り届ける必要があり,この手段として準天頂衛星初号機「みちびき」のLEX (L-band experriment) 信号に精密暦を載せることを計画した。準天頂衛星から放送的に発信される精密暦を洋上ブイで受信するシステムが確立できれば,将来,西太平洋全域にGPS津波計を配備した場合でも,各ブイで一斉に精密単独測位法による津波観測が可能になる。実験では,国土地理院の電子基準点GPS観測データから精密暦を計算し、これを「みちびき」のLEX信号に乗せて室戸沖GPS津波計のブイ上で単独測位できるようにした。また,測位結果は,「きく8号」を用いて被害が無い地域に見立てた大阪に送り,インターネットでリアルタイムにデータ公開を行った。実験の結果は良好であった。本研究は,文科省宇宙科学技術調整委託費及び科研費基盤研究(S)212210007で支援されていることに謝意を表する。1)H.Ishiki,et al.,測地学会誌,Vol.46,No.4,pp.253-2672)M.Leos,et al.,ION GNSS 2008, GA, pp. 397-4053)山本他, 第57回宇科連,2013,3D094)寺田他, 第57回宇科連,2013,3D10