日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS27_1PM1] 津波とその予測

2014年5月1日(木) 14:15 〜 15:15 418 (4F)

コンビーナ:*林 豊(気象研究所)、Mas Erick(International Research Institute of Disaster Science)、馬場 俊孝(海洋研究開発機構)、座長:林 豊(気象研究所)

14:15 〜 14:30

[HDS27-14] 境界積分を用いた断層運動による海底地盤変位の計算法

*秋山 伸一1藤原 広行2橋本 紀彦1 (1.伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、2.独立行政法人防災科学技術研究所)

キーワード:海底地盤変位, 断層運動, 数値計算, 境界積分, Green関数の特異性, PART法

地震による津波の計算では、断層運動に従って現れる海底面の鉛直変位を津波の初期水位と見なすことが多い。このような地盤変位を求める手段として、半無限弾性体内部の矩形断層によって発生する変位の解析解(Okada, 1985)が広く用いられている。この解析解を用いて、不規則な形状を持つ震源断層による地盤変位を求める場合には、不規則な面に沿って矩形の小断層を多数貼り付けるなどして震源断層をモデル化することになる。その結果、作成された断層モデルには、場所によって隣り合う矩形の小断層が重なるか、あるいは小断層に覆われていない部分が現れるようになる。したがって、このような断層モデルを用いて地盤の変位を計算すると、小断層が重なる部分の近傍では過大な変位が求められ、また、小断層に覆われていない部分の近傍では変位が過小に評価される。このような変位のギャップは、震源断層が海底面から深い位置にあれば余り目立たないが、浅い位置にあると無視できなくなる。こうした問題を解決するためには、不規則な形状を忠実にモデル化できる手法が必要となる。このような背景から、本研究では境界積分を用いた海底地盤の変位計算法を開発した。周知のように、断層運動に伴う地盤の変形は、Greenの定理を場の支配方程式に適用することで、地表面と断層面上の境界積分によって表される。さらに、海底地盤を半無限弾性体と仮定すれば、境界条件を満足するGreen関数を用いることによって、海底面の変位は断層面における境界積分のみで求められる。この計算法では、境界積分を数値的に行うため、境界要素法で用いられている線形要素を取り入れて変位の連続性を保証した計算を実施する。ただし、断層面が浅く、海底面に近い場合にはGreen関数の特異性の影響が現れるので、Gaussの積分公式に基づく通常の数値積分を行うと計算の精度が著しく低下する。そこで、本手法では、こうした特異性の影響を正確に評価して積分計算が行えるPART法(Hayami and Brebbia, 1988)を採用する。本発表では、本手法の定式化と検証結果、さらに適用例について報告する。なお、本研究は、防災科研で進められている「全国を対象とした津波ハザード評価」の一環として実施した。参考文献Okada, Y. (1985) Surface deformation due to shear and tensile faults in a half-space, Bull. Seism. Soc. Am., 75, 1435-1154. Hayami, K. and Brebbia, C.A. (1988) Quadrature methods for singular and nearly singular integrals in 3-D boundary element method, (Invited paper), Proc. 10th Int. Conf. on Boundary Elements, Southampton, Computational Mechanics Publication with Springer-Verlag, Vol. 1, pp. 237-264.