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[HDS27-16] 特性化断層モデルにおける滑り不均質による不確実性の検討
キーワード:津波, 確率論的ハザード, 特性化断層モデル, すべり不均質
本研究では、「全国を対象とした津波ハザード評価」の実施に向けて、津波の特性化断層モデルの滑り不均質の違いによる津波水位の不確実性について検討を行った。 確率論的津波ハザード評価では、設定した津波波源モデル群に対し数値シミュレーションにより沿岸での津波水位を推定し、各種の不確実性を考慮して、計算結果を統合することで、ハザードカーブを作成している。津波の数値シミュレーションは、波源モデルを元に海底地盤変動量を計算してこれを初期津波水位とし、津波伝播計算によってハザード評価の対象とする沿岸での津波水位を算出する。このため津波計算結果は、波源モデルの各種断層パラメータ(規模、発生位置、傾斜角、走向角、滑り角、滑り不均質性など)によって変化する。 「全国を対象とした津波ハザード評価」では、海溝型の地震については震源断層がプレート境界面に沿うと仮定し、津波波源を特性化することによって断層の傾斜角・走向角・滑り角の値は固定し、不確実性を考慮しないこととしている(遠山・他, 2014, 本大会)。一方で、規模、発生位置、滑り不均質性については、その値を確定することが難しく、また津波水位に大きく影響すると考えられることから、複数の波源モデル群を計算することで、その不確実性を考慮している。ここで、滑り不均質とはすべり量分布の空間的な不均質のことを指し、既往の震源インバージョン研究との比較から、特性化断層モデルでは滑り量が平均滑り量の2倍となる「大すべり域」、または平均すべり量の4倍となる「超大すべり域」によって表現している(是永・他, 2014, 本大会)。本研究では、滑り不均質による不確実性をより簡便に考慮する方法として、滑り不均質による津波水位のばらつきを対数正規分布で近似できると仮定し、分布の平均値になると推定される一つの滑り分布パターンにばらつきを与えてハザード評価する方法を検討した。津波水位のばらつきの大きさや分布の平均値となる滑りパターンを調べるため、大すべり域の位置を変化させた複数の滑り不均質モデルのパラメータスタディを行った。パラメータスタディは、まず地形変化の影響がない一様水深の地形モデル(理想地形モデル)において、複数の滑り不均質パターンの計算を行い、理想地形モデルでのばらつきを評価した。つぎに、伝播経路の特性や観測点近傍のサイト特性を考慮するために、実際の地形モデル(実地形モデル)を用いたパラメータスタディを行った。その結果、M8以下の比較的規模の小さな地震においては、両者にはばらつきの大きさに大きな違いはないことが分かり、中央に大すべりのある滑りパターンが平均値に最も近く、ばらつきの大きさは対数標準偏差で0.09以下であった。なお本研究は、防災科研において進められている「全国を対象とした津波ハザード評価」の一環として実施された。