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[HDS27-17] 津波波源モデルの特性化に向けた大すべり域の検討
キーワード:津波, 確率論的ハザード, 特性化断層モデル, すべり不均質
従来の決定論的なハザード評価の手法では、既往の津波痕跡を再現しうる最良モデルを利用することが一般的。しかし、この手法ではこれまで発生していない規模や波源域から伝播する津波のリスクを評価することは難しい。一方、確率論的津波ハザード評価の手法では、津波の発生源となる地盤変動を引き起こす断層運動のモデル化において、原理的に考えられうる全ての波源を対象としなければならず多量の計算コストを必要とする。実際にはそれらの波源を構成する母集団から適切にサンプルするように配慮しながら、断層モデルを特性化(簡略化)することで現実的な計算量に抑えることが可能となる(遠山・他, 2014, 本大会)。確率論的津波ハザード評価では、こうした特性化により、一つの断層モデルではなく想定される複数の断層モデルをひとつの群として捉え、このモデル群としてのばらつきを与えることで実現象を包含することを目的とする。ここでは、津波波高に大きく影響を与えるすべり量の「不均質さ」に着目し、断層上で大きくすべる領域が全体に占める面積の割合を設定する手法について検討する。 2011年東北太平洋沖地震津波(以後、2011東北津波)の波源インバージョン研究より得られた断層面すべり量比率の分布を調べると、それぞれの波源インバージョン研究毎に最大すべり量や要素断層の大きさは違うものの、津波波高に大きく寄与したとされる領域のすべり量比率、面積の割合は大同小異である。そこで、本研究では、波源インバージョン時に仮定された要素断層の大きさに依らないように、震源全体のモーメントの単位面積当たりの平均値に対する各要素の単位面積モーメントの比率を「規格化すべり量比率」として算出し、それぞれの要素断層が占める面積の割合と規格化すべり量比率の関係を分析した。2011東北津波以外のM9クラスの地震津波、およびM8クラスについても規格化したすべり量による面積比率を算出した。その結果、M9クラスについては、平均すべりの2倍の領域を「大すべり域」と定義した場合、その面積は全体面積の30%、平均すべりの4倍の領域を「超大すべり域」と定義した場合、その面積を同10%とした3段階の特性化が必要であり、M8クラスについては「大すべり域」の面積を全体の30%とした2段階の特性化が最適であることがわかった。本発表では、これらの特性化断層モデル群を用いてシミュレートした津波波高と、詳細な再現モデルによる津波波高を比較し、前者が後者を網羅することを確認する。本件は、防災科研において進められている「全国を対象とした津波ハザード評価」の一環として実施された。