日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS27_1PO1] 津波とその予測

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*林 豊(気象研究所)、Mas Erick(International Research Institute of Disaster Science)、馬場 俊孝(海洋研究開発機構)

18:15 〜 19:30

[HDS27-P04] 2011年東北地方太平洋沖地震発生直後の日本海沿岸での微小変動

*室谷 智子1岩井 麻樹2佐竹 健治1 (1.東京大学地震研究所、2.横浜市立大学)

キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震, 2011年東北地震津波, 日本海, 海底変動

2011年東北地方太平洋沖地震(M9)の発生時に,日本やロシアの日本海沿岸域での検潮記録は,地震発生数分後から微小変動を記録している.しかし,この地震によって太平洋側で発生した津波が津軽海峡を抜けて日本海沿岸域に到達して観測されるまで,約2~3時間かかる.地震発生後から約2時間に渡る微小変動は,約10分の卓越周期を持っているが,地震発生直後の約10分間では,約1~2分の周期も卓越している.この卓越周期約10分程度の変動は,日本海において傾斜を有する海底地形が地震時に変動した際,水平成分の変動が鉛直方向へ影響を及ぼす変動を考慮することによって,説明が可能である.
 地震発生直後,顕著に微小変動が観測されている検潮所として,日本沿岸の深浦,佐渡,富山,能登(気象庁)や粟島(海上保安庁),ロシア沿岸のRudnaya Pristan,Preobrazhenie,Nakhodka(Shevchenko et al., 2013: Pageoph)が挙げられる.これらの検潮所の津波波形を再現するため,Satake et al. (2013,BSSA)の断層モデルからOkada(1985,BSSA)の式によって地殻変動を求め,それを初期条件として津波波形を計算した.JTOPO30による30秒グリッドの海底地形データを用いて地殻変動の鉛直成分のみから計算した津波波形は,ほとんど変動を示さなかった.それに対し,水平成分の変動による鉛直方向への変動の寄与を考慮すると(Tanioka and Satake,1996:GRL),地震発生直後からの微小変動は計算されたが,波形の再現性は良くなかった.日本周辺の検潮所に関しては,M7000シリーズからさらに細かい5秒グリッドの海底地形データを作成し,同じように津波波形を計算したところ,30秒グリッドデータによる結果よりは波形の再現は良くなった.それでも,地震発生直後から約10分間続く周期約1~2分の短周期の変動は再現できなかった.さらに細かい地形データを用いることで再現性は向上するかもしれない.一方,日本海沿岸近くのF-netの地震波形記録を見ると,同程度の振幅の地震動が観測されており,周期約1~2分の短周期の変動は,検潮儀が地震波を捉えている可能性がある.そこで,ローパスフィルターによって水位変動の短周期成分を落とすと,観測波形と計算波形は良く一致した.ロシア沿岸域の検潮所は,震源域からの距離が500㎞以上とかなり離れているため,直交座標系ではなく,球座標系で求めた地殻変動(Sun et al., 2009: Geophys. J. Int.)を用いて津波波形を計算したが,直交座標系での津波波形と大差はなかった.ロシア沿岸での波形の再現には,細かいグリッドの海底地形や,検潮儀が設置されている湾等の形状などを考慮する必要があると考えられる.
謝辞:本研究は,文部科学省受託研究「日本海地震・津波調査プロジェクト」の一環によって実施されました.また,気象庁,海上保安庁による潮位データと,F-netによる地震波形を使わせていただきました.