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[HDS29-04] 岐阜福井県境,冠山峠周辺の山体重力変形地形の発達史
キーワード:山体重力変形地形, 地すべり, 岐阜, 福井, 冠山
近年,二重山稜,山向小崖などの山体重力変形地形が,大規模深層崩壊の前兆現象として注目されている.また,航空レーザ測量により作られた高精細な地形図の解析により,日本の山岳地域には大小さまざまな規模の山体重力変形地形が,普遍的に存在することも明らかになりつつある.しかし,その形成年代や形成プロセスについてはほとんど明らかにされていない.本発表では,岐阜福井県境の冠山峠周辺に発達する山体重力変形地形の発達史について報告する.冠山峠東の稜線上にある二重山稜の間の凹地埋積堆積物の岩相,年代については昨年の本セッションで発表したので,今回は峠西方の斜面上の山向き小崖と山体斜面の間の凹地埋積堆積物の岩相,年代を報告する. 冠山峠西方約2 kmの岐阜福井県境稜線の南斜面には,斜面の走向にほぼ平行に延びる4列の山向小崖がある.これらの小崖と山体斜面の間の凹地を埋積した堆積物を,ハンドオーガーボーリングやピット掘削により解析した.どの凹地も,凹地埋積堆積物岩相はほぼ共通で,上位から1)腐植質泥層, 2)暗灰色粘土層,3)明灰色粘土層,4)時に礫質となる橙色粘土層からなる.この層序は,冠山峠東方の二重山稜地形の間の凹地埋積堆積物ともほぼ共通している.上から1, 2, 3列目の凹地埋積堆積物からは,アカホヤ火山灰(K-Ah, 7.3 ka)が純層として,あるいは粘土試料中のピークとして確認できた.しかし,その層準は同じ岩相中にはなく,同じ時間面で比較すると,これらの山向小崖の堆積環境が若干異なっていたことが推定される.これらのテフラ年代や凹地埋積堆積物中の木片のAMS-14C年代から,下部の粘土層の平均堆積速度は0.07-0.08 mm/year程度であり,上位の腐植質泥層はそれよりも数倍速いことが示唆された.基盤深度を推定し,堆積速度を外挿すると,各凹地はいずれも数万年前に形成を開始したと推定される.