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[HDS29-06] 深層崩壊発生場予測と危険度評価
キーワード:深層崩壊, 重力斜面変形, 発生場所予測, 危険度評価
Chigira (2009)とChigira et al (2013) は、西南日本外帯の付加体の破断層や混在岩における豪雨による深層崩壊の地質構造と地形とを分析し、深層崩壊の前兆として重力斜面変形が生じていることを明らかにした。そして、その地形的表現として、斜面上部に小崖が形成されていること、小崖が深層崩壊発生場所予測のカギになりうることを報告した。本発表では、さらに、整然層や片岩などの地層も加えて、深層崩壊発生場の予測と危険度評価方法について、地形的特徴と地質構造からとりまとめる。広域から深層崩壊発生危険個所を抽出するには、一般的な地質構造を念頭において、その構造的背景のもとに出現し得る重力斜面変形のパターンを考え、それらが深層崩壊に発達するか否か判断する必要がある。ここでは、まず、主たる重力斜面変形地形と地質体、地質構造、変形メカニズムを関係付け、さらに、斜面上部と斜面下部の状態とを加味して、従来の深層崩壊の実績に基づいて、深層崩壊発生危険度評価法を試みた。不規則凹凸斜面:これは、破断層や混在岩のように複雑な形態の不連続面が形成されている岩体に、萌芽的なすべり層が形成されつつある斜面に特徴的に形成される(2011年台風12号による崩壊)。この変形のみの場合深層崩壊が生じる危険性は低いが、変形領域内に連続的な眉形の小崖が形成されたり、斜面下部に崩壊が生じている場合には、崩壊の危険性が高い。小崖には高さ2m程度のものもある。線状・皺状凹地:山稜の片側に形成された線状凹地は、急傾斜する不連続面を持つ整然層やスレートに生じる曲げトップリングによって形成されることが多い。この変形自体は深層崩壊に至る可能性は低いが、連続的な谷向きの眉形小崖が形成され、また、下方斜面に崩壊が生じている場合には深層崩壊の発生危険性が高い。さらに、線状凹地が山稜にあり、その縁が斜面傾斜方向の谷に続いている場合にも、崩壊の危険性が高い。但し、線状凹地が山稜の両側に対称に形成されている場合には、山体の側方拡大と山頂の陥没が示唆され、急激な崩壊の可能性は非常に低い。大規模な滑落崖または山上凹地:この地形の内部構造は、逆目盤の構造の場合には、地層の座屈変形の可能性が高く、その場合、強度の高い地層が連続していたり、座屈の程度が小さい場合には深層崩壊の危険性は低いが、それが進行したり、斜面下部が崩壊している場合には、深層崩壊の危険性が高い。柾目盤の地層あるいは破断層や混在岩の場合には、すべり層が連続的になった地すべりである可能性が高い。地すべりの場合には、緩慢に移動は継続するものの深層崩壊の発生する危険性は低いが、下部が崩壊している場合には、深層崩壊の発生する危険性が高い。引用文献:Chigira, M., 2009. September 2005 rain-induced catastrophic rockslides on slopes affected by deep-seated gravitational deformations, Kyushu, southern Japan. . Engineering Geology, 108, 1-15.Chigira, M., Tsou, C.-Y., Matsushi, Y., Hiraishi, N., Matsuzawa, M., 2013. Topographic precursors and geological structures of deep-seated catastrophic landslides caused by Typhoon Talas. Geomorphology, 201, 479-493.