15:45 〜 16:00
[HGG01-P02_PG] イメージスケッチを用いたフィジーの風景イメージの民族比較
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:イメージスケッチ, 風景, 民族比較, フィジー共和国
はじめに
南太平洋の島国にあるフィジー共和国は農業と観光が主要な産業である。住民はフィジー系が51%、インド系移民が44%である。本研究では、フィジー系とインド系の住民を対象に、両民族の森林に対するイメージの違いを、スケッチ調査から明らかにすることを目的とした。
研究方法
調査は、2013年8月から12月にかけてフィジー共和国に滞在し、スケッチ調査を住民に対して実施した。調査は面接方式で,158名から回答を得た。調査では、森林をキーワード、文章、スケッチで描写してもらった。1)まず、フィジーの「森林」について心に浮かぶままの自由な考えを連想していくつかのキーワードを記入してもらった。2)次に100語程度の文章で、「森林」のイメージについて説明してもらった。3)さらに、「森林」のイメージについて簡単なスケッチを描いてもらった。分析では、森林のイメージを概観するため、スケッチに描かれた構成要素を数えた。さらに回答者と描いているスケッチの空間構造を、距離から近景・中景・遠景の3つと、高い位置からの眺めである俯瞰景の合計4種類に分類した。民族別の分析には、マン・ホイットニーのU 検定を使用した。
研究結果と考察
回答者の最終学歴では,小~中が31名、中~高校55名、専門21名、大学37名であった。回答者の居住地の都市化の程度では,都市部が89名,郊外が69名であった。
全体158名のスケッチから1504個の構成要素が抽出された、1枚のスケッチ当たり平均9.5個であった。民族別には、フィジー系9.09個、インド系10.44個であった。これら1504個の構成要素は、73種類に分類できた。158名のスケッチ別に構成要素の出現割合を求めた。多い順に、山(82%)、木(69%)、太陽(63%)、ヤシの木(58%)、家(51%)、海(47%)、川(44%)、森(42%)、鳥(35%)、村(34%)、雲(32%)であった。森林を描いてもらったが、スケッチには山、木、太陽などの自然要素が多く描かれた。また、身近なヤシの木、家、海なども描かれていた。フィジーの住民のスケッチには、山を中心に描きながら熱帯地域に広がるヤシの木などを含んでいた。さらには自然風景の中には、家や村などを同時に描かれることもあり、自然が身近な暮らしの中に密接に結びついていることが考えられる。空間構造では、遠景(59%)、俯瞰景(18%)、近景(13%)、中景(8%)であった。
スケッチに描いた1504個の構成要素を大きく6つに分類し、総数1504個に対する割合を示す。自然631個(42%)、人工物266個(18%)、天候206個(14%)、植物183個(12%)、乗物33個(2%)、生き物171個(11%)であった。天候とは太陽、雲、雷、星などで表現されていた。
民族別の回答割合をみると、自然ではフィジー系76%、インド系54%であり、有意な差がみられた(p<.05)。農村ではフィジー系24%、インド系44%であり、有意な差がみられた(p<.05)。フィジー系は森林を自然の中に捉え、インド系は森林を自然だけでなく農村にもとらえている可能性がある。自然では、山や河川、森林などから構成された景観であり、農村は家や農場などの人工物が主体となって描かれている景観であった。
73種類で個別に差の検定を行ったが、6種類のみに有意差がみられた。民族別の回答割合をみると、ヤシの木(50%、74%)、表情の入った太陽(19%、34%)、草地(34%、12%)、サトウキビ(7%、20%)、平原(フィジー系1%、インド系10%)ホテル(0%、8%)であった。スケッチの描写を分析すると、フィジー系は自然に関するもの、インド系は植物など描写に関してフィジー系よりも細かな描写がみられた。
空間構造については、遠景ではフィジー系が55%、インド系68%とともに遠景として描写される風景が多かった。遠景のスケッチは、遠くに山並みが連なり、山から滝や河が流れ、海へと繋がっている。さらにその周辺には木々や熱帯特有のヤシの木や家や村など人工物が描かれていた。空間構造を民族別にみると、近景でフィジー系19%、インド系2%であり、有意な差がみられた(p<.05)。
おわりに
フィジー系とインド系の住民を対象に、両民族の森林に対するイメージの違いを、スケッチ調査から明らかにすることができた。
南太平洋の島国にあるフィジー共和国は農業と観光が主要な産業である。住民はフィジー系が51%、インド系移民が44%である。本研究では、フィジー系とインド系の住民を対象に、両民族の森林に対するイメージの違いを、スケッチ調査から明らかにすることを目的とした。
研究方法
調査は、2013年8月から12月にかけてフィジー共和国に滞在し、スケッチ調査を住民に対して実施した。調査は面接方式で,158名から回答を得た。調査では、森林をキーワード、文章、スケッチで描写してもらった。1)まず、フィジーの「森林」について心に浮かぶままの自由な考えを連想していくつかのキーワードを記入してもらった。2)次に100語程度の文章で、「森林」のイメージについて説明してもらった。3)さらに、「森林」のイメージについて簡単なスケッチを描いてもらった。分析では、森林のイメージを概観するため、スケッチに描かれた構成要素を数えた。さらに回答者と描いているスケッチの空間構造を、距離から近景・中景・遠景の3つと、高い位置からの眺めである俯瞰景の合計4種類に分類した。民族別の分析には、マン・ホイットニーのU 検定を使用した。
研究結果と考察
回答者の最終学歴では,小~中が31名、中~高校55名、専門21名、大学37名であった。回答者の居住地の都市化の程度では,都市部が89名,郊外が69名であった。
全体158名のスケッチから1504個の構成要素が抽出された、1枚のスケッチ当たり平均9.5個であった。民族別には、フィジー系9.09個、インド系10.44個であった。これら1504個の構成要素は、73種類に分類できた。158名のスケッチ別に構成要素の出現割合を求めた。多い順に、山(82%)、木(69%)、太陽(63%)、ヤシの木(58%)、家(51%)、海(47%)、川(44%)、森(42%)、鳥(35%)、村(34%)、雲(32%)であった。森林を描いてもらったが、スケッチには山、木、太陽などの自然要素が多く描かれた。また、身近なヤシの木、家、海なども描かれていた。フィジーの住民のスケッチには、山を中心に描きながら熱帯地域に広がるヤシの木などを含んでいた。さらには自然風景の中には、家や村などを同時に描かれることもあり、自然が身近な暮らしの中に密接に結びついていることが考えられる。空間構造では、遠景(59%)、俯瞰景(18%)、近景(13%)、中景(8%)であった。
スケッチに描いた1504個の構成要素を大きく6つに分類し、総数1504個に対する割合を示す。自然631個(42%)、人工物266個(18%)、天候206個(14%)、植物183個(12%)、乗物33個(2%)、生き物171個(11%)であった。天候とは太陽、雲、雷、星などで表現されていた。
民族別の回答割合をみると、自然ではフィジー系76%、インド系54%であり、有意な差がみられた(p<.05)。農村ではフィジー系24%、インド系44%であり、有意な差がみられた(p<.05)。フィジー系は森林を自然の中に捉え、インド系は森林を自然だけでなく農村にもとらえている可能性がある。自然では、山や河川、森林などから構成された景観であり、農村は家や農場などの人工物が主体となって描かれている景観であった。
73種類で個別に差の検定を行ったが、6種類のみに有意差がみられた。民族別の回答割合をみると、ヤシの木(50%、74%)、表情の入った太陽(19%、34%)、草地(34%、12%)、サトウキビ(7%、20%)、平原(フィジー系1%、インド系10%)ホテル(0%、8%)であった。スケッチの描写を分析すると、フィジー系は自然に関するもの、インド系は植物など描写に関してフィジー系よりも細かな描写がみられた。
空間構造については、遠景ではフィジー系が55%、インド系68%とともに遠景として描写される風景が多かった。遠景のスケッチは、遠くに山並みが連なり、山から滝や河が流れ、海へと繋がっている。さらにその周辺には木々や熱帯特有のヤシの木や家や村など人工物が描かれていた。空間構造を民族別にみると、近景でフィジー系19%、インド系2%であり、有意な差がみられた(p<.05)。
おわりに
フィジー系とインド系の住民を対象に、両民族の森林に対するイメージの違いを、スケッチ調査から明らかにすることができた。