日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01_29PM1] International comparison of landscape appreciation

2014年4月29日(火) 14:15 〜 16:00 424 (4F)

コンビーナ:*水上 象吾(佛教大学社会学部公共政策学科)、座長:Rupprecht Christoph(Griffith School of Environment, Griffith University)、高山 範理(独立行政法人 森林総合研究所)

15:45 〜 16:00

[HGG01-P03_PG] ニュージーランド滞在経験者と未経験者の日本人による自然風景評価の比較

ポスター講演3分口頭発表枠

*堀内 佳菜1古谷 勝則1 (1.千葉大学大学院園芸学研究科)

キーワード:日本, ニュージーランド, 風景認識, 風景

はじめに
ニュージーランドは日本の国土とほぼ同等の島国であり、また気候も亜熱帯・温帯と共通する点がある。また移民国家であるNZには多くの日本人が移住、長期滞在をしているが、日本からの距離が遠いためか、NZについて詳細を知る日本人は少ない。そこで本研究では、ニュージーランド滞在経験を持つ日本人と経験を持たない日本人を対象に、自然風景の認識の違いを明らかにすることを目的とした。

研究方法
両国の自然風景を海岸・滝・河川・森林・湿地・山・湖に分類し、各カテゴリーの風景写真を日本35枚、NZ 34枚、合計69収集した。次に、これらの写真を対象に、それぞれの国らしさを示していると感じる写真を各国3枚ずつ選定してもらった。回答者は、ニュージーランド(NZ)滞在経験のある日本人グループ(NJG)25名、NZ滞在経験のない日本人グループ(JPG)42名、ニュージーランド人グループ(NZG)12名であった。そして、両国の自然風景のイメージ・キーワードを各国3つずつ書き出してもらった。

研究結果
まず、日本らしい風景として、全てのグループで最も選ばれたものは、富士山の写真であった。選出された上位2種類の写真はいずれも富士山であった。最も多く選ばれたものは、芦ノ湖と神社の鳥居が共に写った富士山の写真であった(NJG 76.0%、JPG74.0%、NZG50.0%)。3番目では各グループで結果が異なった。NJGは富士山と樹海の写真(32.0%)、JPGは沢の写真 (28.7%)、NZGは滝を背景にした紅葉の写真(16.7%)と、残雪が地面に残る森の写真(16.7%)であった。JPGで選ばれた沢の写真は、実際はNZで撮影されたものであり、日本の風景として認識されていた。
NZらしい風景では、日本の富士山の写真ほど集中的に選択されたものはなかった。最も多く選ばれた写真は全グループ共通しており、岬と灯台の写真であった(NJG36.0%、JPG 40.5%、NZG16.7%)。二番目に多く選ばれた写真は、NJGは、火山地帯にある湖と立ち上がる蒸気の写真(24.0%)であった。JPGでは、火山クレーターと固まったマグマの写真(23.8%)及び、湖の写真(23.8%)であった。日本では見慣れない光景であることから、「NZらしい風景」として選ばれたことが推測できる。NZGでは、選択された写真が分散しており、特徴を見いだせなかった。

各国の自然風景のイメージを表すキーワード(KLI)では、地形や植物を示す名詞、動物を示す名詞、色を表す名詞、印象を示す形容詞、固有名詞などが回答された。NZのKLIでは、NJGでは、森や丘、山などの単語の合計が29.6%であった。緑や、ダイナミック、広大などの単語がそれぞれ22.2 %であった。広大でダイナミックな山や森が織りなす風景をイメージしている可能性が高い。一方、JPGでは、広大 (35.0%)、牧草地・草原 (27.5 %)、空、野性味 (25.0%)であった。同じく広大ではあるが、草原や牧草地をイメージしている可能性が高い。
NJGとJPGの自然風景の認識の違いを、写真選択とKLIから明らかにした。写真選択では、あまり違いは見られなかった。しかし、JPGは、NZの写真を、日本らしい風景として選択していた。KLIでは、JPGが広大な草原を、NJGは広大な山や森が織りなす風景を記載していた。