日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01_29PM1] International comparison of landscape appreciation

2014年4月29日(火) 14:15 〜 16:00 424 (4F)

コンビーナ:*水上 象吾(佛教大学社会学部公共政策学科)、座長:Rupprecht Christoph(Griffith School of Environment, Griffith University)、高山 範理(独立行政法人 森林総合研究所)

15:45 〜 16:00

[HGG01-P04_PG] ダライ湖自然保護区における景観変遷と住民の意識分析

ポスター講演3分口頭発表枠

*韓 国栄1古谷 勝則1 (1.千葉大学大学院園芸学研究科)

キーワード:ダライ湖自然保護区, 景観変遷, 住民, 景観要素, 意識, 草原

はじめに
 中国内モンゴルでは草原景観が減少している。農地の増加と草原の砂漠化が草原減少の原因と言われている。放牧を生業としているモンゴル族にとって、草原の減少は深刻である。本研究では中国の代表的な草原であるフルンボイル草原に位置するダライ湖自然保護区を対象地とした。自然保護区の住民の日常生活に基づいた景観要素を抽出し、自然保護区の景観変遷を明らかにすることを目的とした。

研究方法
 ダライ湖自然保護区の草原で遊牧する住民対象に、2013 年12 月末から2014 年1 月中旬に意識調査を実施した。意識調査は面接方式で409 名の回答を得た。意識調査では,回答者の属性と、ダライ湖自然保護区の草原景観構成要素を把握した。草原の景観構成要素としては、10年前、現在、そして将来像(たとえば10年後)を調査した。景観構成要素の調査では、文献調査から得られた25個の景観構成要素から代表的な要素を複数回答で調査した。他に自由記述欄を設けた。また、住民が期待する草原の管理方法についても回答を得た。統計手法としてカイ二乗検定を使用した。

結果
 文献調査から得たダライ湖自然保護区の景観要素には、湖、川、湿地、草原、野生動物、野生植物などといった自然景観、モンゴルゲルなどの人文景観、また、経済の発展により、新たに発展してきた電気、鉱業、建築物などの景観要素があった。
回答者の属性では自然保護区内の居住者が236名であったので、有効回答者数を236名とした。回答者の平均年齢は41.1歳で、民族では、モンゴル族170名(72%)、漢民族(23%)、エヴェンキ族(5%)であった。
 10年前の代表的な景観構成要素として、有効回答者全員が選んだのは野生動物、野生植物、草原、川であり、99%が選んだのは湖,砂地、家畜であった。鉄道、ゲルキャンプ、案内・広告看板、旅行施設、キャンプ車は1%のみに選ばれた。
 現在の代表的な景観構成要素として、全員が選んだのは集落、鉄道、砂地、家畜であり、232名(98%)が選んだのが道路、電線であった。次に、229名(97%)が鉱業地を選んだ。最も少ないのは野生動物の54名、(23%)であった。
将来の代表的な景観構成要素として、全員が選んだのは野生植物、草原、家畜、川であり、233名(98%)が道路を選んだ。次に、湖が227名(97%)であった。選択者が少なかったのは、「鉱業地」(41名、17%)と「電線」(50名、21%)であった。
10年前の景観構成要素と現在を比較すると、自然景観要素は93%から60%に減少していた。一方で、将来の自然景観要素は87%であった。住民が期待する草原の管理については、「現在の状態を維持する」(103名、44%)と「自然遷移に任せる」(79名、34%)であった。次に、「管理を強化する」(51名、22%)が多かった。

おわりに
 本研究では、自然保護区内住民の考えている景観を、10年前、現在、将来(約10年後)で明らかにした。また、住民が期待する草原の管理方法についても明らかにした。