日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG21_29PM2] 自然資源・環境の利用と管理

2014年4月29日(火) 16:15 〜 18:00 421 (4F)

コンビーナ:*上田 元(東北大学大学院環境科学研究科)、大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、座長:大月 義徳(東北大学大学院理学研究科地学専攻環境地理学講座)、上田 元(東北大学大学院環境科学研究科)

17:15 〜 17:30

[HGG21-05] 森林「周辺域」における地域ガバナンスの構造的可能性-南インドの事例から-

*木本 浩一1S. アルン ダス2 (1.広島女学院大・国際教養、2.マイソール大・地理)

キーワード:保護区, 国立公園, 地域, ガバナンス, インド

近年、森林問題は世界的な規模で「整理」されつつある。深刻な森林減退という「事実」と適切な保護の「必要性」とが国際的な世論となって、各国・地域において政策の大枠となり、その中で各種の施策が実施されている。1980年代後半に顕著になった、木材生産を目指す森林ガバメントから「地域住民の参加」を柱とする森林ガバナンスへの急旋回は、そうした傾向の端緒であったと言うことができる。1990年代以降、各地で住民参加型の森林管理が喧伝され、森林の現状分析から、政策論、海外援助に関する研究、コモンズ論などの理論研究、多彩な研究業績が蓄積されてきた。インドにおいては、1990年代に本格化した共同森林経営(Joint Forest Management: JFM)が注目され、森林率において一定の「回復」をみせている。しかしながら、1990年代後半からは、野生動物問題や土地獲得競争などの諸問題が噴出している。確かに、JFMのもと、森林率の回復といったマクロ・レベや、住民の参加といった村落(ミクロ)レベルでの活動の「改良」には一定の成果を認めることができるかもしれないが、一方で、森林およびその「周辺域」を含む森林「地域」における諸問題が看過されている。森林政策の「成功」が、森林「地域」における諸問題を惹起しているとも言える。仮に、今後とも住民参加型の森林経営が進んでいくとしても、森林「地域」の問題は固有の枠組みで検討されなければならない。森林が「国立公園化」や法的・物理的な囲い込みによって「純化」するに従って、その周辺には都市化におけるスプロール現象のごとく無秩序な(ドーナツ状の)区域が現出する。本報告では、これまでの南インドでの調査を踏まえて、森林「地域」の特性およびそこにおける諸問題を概観したい。