日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM22_30AM1] 地形

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 422 (4F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、小口 千明(埼玉大学・地圏科学研究センター)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、座長:小玉 芳敬(鳥取大学地域学部)

09:45 〜 10:00

[HGM22-04] レーザー回折散乱法およびデジタル画像解析法を用いた堆積物の粒子径測定技術の現状と課題

*七山 太1古川 竜太1 (1.産業技術総合研究所 地質情報研究部門)

キーワード:レーザー回折散乱法, デジタル画像解析法, 堆積物, 粒子径測定技術, 現状, 課題

粒子径計測は様々な物質の特徴を評価する上で最も基礎的な物理情報の一つであり,その分析技術も粉体工学会によって明確にJIS 規格化されている(椿・早川,2001).これまでの地形学分野においては,泥,砂,礫および火山灰等の粒度分析を,篩分級法,沈降法またレーザー回折散乱法(以下LD),もしくはこれらを併用して行うことが一般的であった.現在のLDの最新技術では,各社とも10nm-3mm のワイドレンジの粒子群を同時にかつ短時間に計測することが可能となっている.しかし,単一の物性値を持つ工業製品の粉体ではなく,様々な割合の複合物である自然界の土砂を検討する際には,未だ多くの技術的な課題が散在するように思える.例えば,サブミクロンオーダーの微小粒子の測定では入射する光の波長が短いほど大きな散乱光強度が得られることが確認されているので,レーザー光だけでは強度が不十分となることが知られている.しかも非球形粒子の形状によって後方錯乱が大きくなり,粒径は細粒側にシフトする傾向が確認されている.また,Mie 理論を利用して逆計算によって粒径を求める場合は,粒子屈折率と吸収係数の値のユーザー側での設定が必要となるが,自然界の複合試料を取り扱う地質学分野の場合,この仮定はユーザー側にとってはたいへん悩ましい問題である(七山ほか,2013).最近の粉体工学分野での粒子径計測では,デジタル画像解析法を用いた新しい分析機器の開発が増えてきている.この方法では,先ず粒子の2次元画像をCCDカメラで取得し,ピクセル分割してデジタル画像化する方法である.大きく静的(JIS Z 8827-1:2008;ISO 13322-1)および動的(JIS Z 8827-2:2010;ISO 13322-2)の2つの手法に区分されるが,どちらも粒子群をデジタル画像として取り込み,パソコン上で統計処理する過程は同じである.単一粒子のデジタル画像を用いた解析手法は明解であり,ユーザー側からの信頼は厚い.さらに,デジタル画像を用いるため,異なる定義ごとの粒子径や粒度分布に関する情報だけでなく各種粒子形状パラメーター,例えばアスペクト比(aspect ratio),1-アスペクト比(elongation),円形度(circularity),面積円形度(HS circularity),周囲長包絡度(convexity),面積包絡度(solidity),等の値を同時に定量的に解析できる機能が最大の利点といえる.さらに,輝度(intensity)および透過率(transmittance)等の物性値も別途得ることが出来る.これら粒子形状と物性値に関するデータを粒子径測定結果と併せて解析することが,今後の粒度分析の新しいスタンダードになっていくことが予想される(七山ほか,2013).産総研では,2008年12月に動的デジタル画像解析式粒子径測定装置であるドイツRetsch社の開発したCAMSIZER の導入を行っており,現在も地質試料分析のためにルーチン化作業が進められている.CAMSIZERは2 台のCCD カメラ(CCD-Basicで75μm,CCD-Zoomで15μmの解像度)を使い,30μm-30mm の超ワイドレンジでの再現性の高い高精度な粒度分析が可能である.但し,現在は乾式システムのみであり,30μmより細粒な粒子は原理的に計測できない.そこで我々は,2012年12月に新たに静的デジタル画像解析式粒子径測定装置Morphologi G3を導入した.この機器は英国Malvern社が開発した最新の粒子径測定装置である.粒子径の測定範囲は0.5μm ~1 mmであり,実際には0.2μmまで検出は可能とされている.更に,2014年3月に,5mmの粒子径まで測定が可能な堀場製作所の最新LD,LA-960Gを導入した.前述通り,現状のLDによる粒子径測定ではサブミクロンオーダーでの細粒粒子の測定や屈折率の設定に難があることが知られているが,今後,静的デジタル画像解析法を併用し,相互にデータを比較することによって,これらの問題の解決法を提案できる可能性がある. 本報告は,特別会計に関する法律(エネルギー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として,原子力機構が実施した平成24年度「外部ハザードに対する崩壊熱除去機能のマージン評価手法の研究開発」の成果の一部を含んでいる.引用文献:椿 淳一郎・早川 修,2001,現場で役立つ粒子径測定技術.日刊工業新聞社,161p.七山 太・古川竜太・小笠原正継,2013,粒子径を測る!GSJ地質ニュース,2,82-85.