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★ [HGM22-12] 鳥取県三朝町高釜における甌穴群の分布特性と発達過程-河川侵食における甌穴の役割-
キーワード:甌穴群, 地形発達過程, 列状配置, 河川浸食過程, バルーン平面撮影, 鳥取県三朝町小鹿川
はじめに 甌穴とは河床の岩盤面などに形成される侵食穴のことである。河床のくぼみや割れ目に入った砂利が渦流で回転し,岩盤を削り形成される。鳥取県三朝町を流れる小鹿川では,高釜周辺の河床や河岸の岩盤上に多くの甌穴が形成されている。この甌穴群は以前から地元では知られており,個々の甌穴の形状を記載した調査報告が行われてきた(石村ほか;1986)。 本研究では甌穴群の分布特性と発達過程を明らかにすることを第1の目的とし,一般論として甌穴群が河川侵食過程でどのような役割を持つかを考察することを第2の目的とした。調査方法 調査は,段丘調査(段丘面区分,段丘を覆う古土壌のC14年代測定),バルーンを用いた平面写真撮影,測量調査(縦断測量,横断測量),篩による粒度分析の4つを行った。結果および考察 i)甌穴群が発達する高釜の河道中央に露出した岩盤は,侵食段丘面(第8面)の名残であった。第8面を覆う土壌層から採取した試料のC14年代測定結果は,約3,500年calBPであった。すると,高釜甌穴群は約3,500年calBP以降に形成されたことになる。 ii)第8面形成後,掃流砂礫量が減少する過程で,縦渦に対応した縦溝が岩盤に刻まれ,その内部に甌穴が発達した。そのため,甌穴は列状配置をなしている。列状に並んだ縦溝のうち最も右岸側のものが選択的に侵食されて,現在の流路となっている(図)。 iii)高釜は遷急区間に位置し,河岸や河床は割れ目の少ない硬質凝灰岩で構成され,甌穴を形成するのに適したサイズの礫(32~128mm)が流下する。つまり甌穴群の形成条件を満たした場所である。 iv)高釜の投影縦断面(図)を見ると,河道中央の堅固な岩盤を縦溝や甌穴群が低水流路近くの高さにまで下刻していることがわかる。 v) 掃流砂礫量が多いときには面的(カンナ状)侵食による侵食段丘面を,少なくなるに従って線的(ノコギリ状)侵食による溝を,さらに点的(ドリル状)侵食による甌穴群を形成している。つまり甌穴群は河川侵食過程において,少ない運搬砂礫量で固い岩盤を効率よく侵食する重要なプロセスと捉えられる。