18:15 〜 19:30
[HGM22-P03] 奈良盆地における沖積層発達を規定する要因
キーワード:沖積層, 内陸盆地, ボーリング柱状図, 奈良盆地
沖積層研究は,地下に海成層の分布する臨海部で数多くおこなわれてきた.臨海部での研究が蓄積され,沖積層の形成が氷河性海水準変動との関係で詳細に議論されるようになった一方で,内陸部の沖積層の発達過程には不明な点が多く残されている.本研究では研究事例が少なく,形成過程を支配する要因について理解が進んでいない奈良盆地を対象として,沖積層の特徴および発達過程を規定する要因について考察した.
盆地中央部の大和郡山市馬司で掘削した2本のオールコア堆積物(MK1,MK2)を用いて堆積相解析と放射性炭素年代測定をおこなうことで沖積層の基底を明らかにした.また,既存のボーリング柱状図を用いて岩相およびN値をもとに,奈良盆地および大和川下流域の河内平野において上部更新統と沖積層とを区分した.河内平野では,最終氷期最盛期頃の旧大和川の流路の推定をおこなった.完新世後期の堆積速度の変化をみるために橿原考古学研究所が発行する,奈良県遺跡調査概報に記載されている遺構検出面埋没深度の平均値を日本史の時代区分ごとに求めた.
MK1コアの深度287 cmおよび250 cmから得られた木片はそれぞれ23,890 cal BP,2,320 cal BPの値を示し,MK2コアの深度375 cmから得られた木片は39,980 cal BPの値を示した.これらの年代値から沖積層の層厚は3 m程度と見積もられた.この層厚は従来研究で得られている放射性炭素年代値と調和的である.また,沖積層の堆積はおおよそ2,000 cal BP以降に開始した可能性が考えられる.この結果は大阪湾の海面カーブに対応しておらず,盆地内の沖積層形成は海水準変動の影響は受けていないと考えられる.大阪湾の海水準変動は沿岸部の河内平野における河床勾配を変化させるが,硬度が高い白亜系および新第三系の火成岩が河床を構成する生駒山地内の亀の背狭窄部の河床は,河内平野よりも相対的に遅い速度で下刻が進行したと考えられる.大阪湾の海面変動の影響は亀の背狭窄部より上流域に及びにくいことから,奈良盆地の侵食基準面は,亀の背狭窄部における大和川の水面標高であるといえる.
既存ボーリング柱状図から作成した奈良盆地における南北方向の地形地質断面図から,盆地南部の沖積層が北部に比べて相対的に厚いことがわかる.盆地南部の流域面積が北部に比べて2.3倍大きいことから,盆地南部において沖積層の層厚が大きいことは,流域面積の大きさに依存している可能性が考えられる.盆地中央部から南部にかけて自然堤防がよく発達していることからも,洪水氾濫の頻度が高かったことが推測される.弥生時代~鎌倉時代の遺構検出面深度の値からは飛鳥時代以降の堆積速度の増加が示唆された.従来研究の花粉分析結果によれば,この時期には既に植生の二次林化が進行していたことから,人間活動による山地の荒廃が供給土砂量を増加させ,沖積層の形成に影響を与えたことも考えられる.
盆地中央部の大和郡山市馬司で掘削した2本のオールコア堆積物(MK1,MK2)を用いて堆積相解析と放射性炭素年代測定をおこなうことで沖積層の基底を明らかにした.また,既存のボーリング柱状図を用いて岩相およびN値をもとに,奈良盆地および大和川下流域の河内平野において上部更新統と沖積層とを区分した.河内平野では,最終氷期最盛期頃の旧大和川の流路の推定をおこなった.完新世後期の堆積速度の変化をみるために橿原考古学研究所が発行する,奈良県遺跡調査概報に記載されている遺構検出面埋没深度の平均値を日本史の時代区分ごとに求めた.
MK1コアの深度287 cmおよび250 cmから得られた木片はそれぞれ23,890 cal BP,2,320 cal BPの値を示し,MK2コアの深度375 cmから得られた木片は39,980 cal BPの値を示した.これらの年代値から沖積層の層厚は3 m程度と見積もられた.この層厚は従来研究で得られている放射性炭素年代値と調和的である.また,沖積層の堆積はおおよそ2,000 cal BP以降に開始した可能性が考えられる.この結果は大阪湾の海面カーブに対応しておらず,盆地内の沖積層形成は海水準変動の影響は受けていないと考えられる.大阪湾の海水準変動は沿岸部の河内平野における河床勾配を変化させるが,硬度が高い白亜系および新第三系の火成岩が河床を構成する生駒山地内の亀の背狭窄部の河床は,河内平野よりも相対的に遅い速度で下刻が進行したと考えられる.大阪湾の海面変動の影響は亀の背狭窄部より上流域に及びにくいことから,奈良盆地の侵食基準面は,亀の背狭窄部における大和川の水面標高であるといえる.
既存ボーリング柱状図から作成した奈良盆地における南北方向の地形地質断面図から,盆地南部の沖積層が北部に比べて相対的に厚いことがわかる.盆地南部の流域面積が北部に比べて2.3倍大きいことから,盆地南部において沖積層の層厚が大きいことは,流域面積の大きさに依存している可能性が考えられる.盆地中央部から南部にかけて自然堤防がよく発達していることからも,洪水氾濫の頻度が高かったことが推測される.弥生時代~鎌倉時代の遺構検出面深度の値からは飛鳥時代以降の堆積速度の増加が示唆された.従来研究の花粉分析結果によれば,この時期には既に植生の二次林化が進行していたことから,人間活動による山地の荒廃が供給土砂量を増加させ,沖積層の形成に影響を与えたことも考えられる.