日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM22_30PO1] 地形

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、小口 千明(埼玉大学・地圏科学研究センター)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

18:15 〜 19:30

[HGM22-P09] 寒冷環境における塩類風化実験 ―凍結破砕作用におよぼす溶解塩の影響―

*佐藤 昌人1八反地 剛2 (1.筑波大学大学院生命環境科学研究科、2.筑波大学生命環境系)

キーワード:塩類風化, 凍結破砕, 寒冷環境, 凍結歪み, 室内実験

寒冷気候下において,”granular disintegration”と呼ばれる岩盤表面の剥離やタフォニなど塩類風化に特徴的な地形の存在,岩盤表面や土層への塩類析出が指摘されている.しかし,寒冷条件での塩類風化に関する観測や実験はほとんど行われておらず,寒冷気候下において実際に塩類風化が作用しているかどうかの検討は充分に行われていない.本研究では,溶解塩が凍結破砕作用に与える影響について,歪み変化や破壊が起こる際の温度条件を検討するため,4種類の岩石と3種類の塩溶液を用いて凍結破砕実験を行った.
実験には,各辺5 cmの立方体に整形した岩石試料(大谷凝灰岩,白河溶結凝灰岩,青島砂岩,安山岩)を用いた.3種類の塩(塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウム)の飽和水溶液(10℃)もしくは蒸留水に試料を72時間浸して飽和させたのち,試料をアルミホイルで覆って含水率を100%に保ったまま凍結融解環境に設置し,80サイクルの凍結融解実験を行った.凍結融解サイクル中の試料表層および中心部の温度,試料表面の破壊,変形状態を把握するため,試料表面から1.0 cm,2.5 cmの深さにそれぞれ熱電対を埋設し,さらに試料表面に歪みゲージを貼り付けて,5分おきに連続測定を行った.凍結融解サイクルは温度範囲を-30℃から10℃,冷却速度を4 ℃/h,24時間で一周期とした.また,試料の重量,弾性波伝搬速度,エコーチップ反発値を10サイクルごとに測定した.
塩化ナトリウム溶液に飽和させた試料では,-25℃前後まで凍結が起こらなかった.一方で硫酸ナトリウムと硫酸マグネシウムの飽和溶液では凝固点の降下は少なく,-3℃から -7℃程度で凍結が発生し,試料表面に膨張歪みが発生した.試料の引張強度が小さい岩石ほど凍結時の歪みは大きく,塩溶液で飽和させた試料の凍結歪みは蒸留水に飽和させた試料に比べて大きかった.とくに硫酸マグネシウムで飽和させた試料で凍結歪みは最も大きな値を示した.凍結時の歪みの大きさは塩類風化に対する風化指標WSIと良く対応していた.引張強度が小さい大谷凝灰岩もしくは青島砂岩を用いた実験では,弾性波伝搬速度,エコーチップ反発値の低下がみられた.弾性波速度およびエコーチップ反発値の低下率は,凍結歪みと同様に塩類風化に対する風化指標WSIとよく対応した.