日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR24_1PM2] 平野地域の第四紀層序と地質構造

2014年5月1日(木) 16:15 〜 17:00 313 (3F)

コンビーナ:*宮地 良典(産業技術総合研究所)、卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)、座長:宮地 良典(産業技術総合研究所)

16:30 〜 16:45

[HQR24-07] 2011年東北地方太平洋沖地震時の液状化-流動化現象解明のための地層断面調査-新ACEライナーを用いた地層断面調査方法

*重野 聖之1鈴木 喜之1福間 哲2風岡 修3亀山 瞬3森崎 正昭3吉田 剛3香川 淳3酒井 豊3木村 満男3小倉 孝之3 (1.明治コンサルタント(株)、2.(有)ACE試錐工業、3.千葉県環境研究センター地質環境研究室)

キーワード:液状化-流動化, 2011東北地方太平洋沖地震, 千葉市美浜区, 人工地層, 地層断面調査, ACEライナー

1. はじめに私達の主な生活面である沖積低地の地層を採取し,その成り立ちを考えることは大変重要である.平成23年(2011)年東北地方太平洋沖地震では千葉県内において人工地層分布域を中心に液状化-流動化現象が起こり,50cmを越える極所的な地表沈下が発生した.これら液状化-流動化発生原因のひとつとして,浅層部の人工地層と深部の沖積層の地質構造の影響が大きい可能性が高くなってきた(風岡ほか,2011).本研究では地層中の液状化-流動化現象箇所の認定やメカニズム解明する目的でACEライナー(特許3669495号)を改良し,浅層地下における浚渫土砂により埋立られた人工地層や人工地層以深の沖積層を定方位・不攪乱の状態で採取し,地層の様々な構造を観察することが出来たため,その調査方法を報告する.2 調査方法液状化-流動化の調査は,乱れや欠損がなく,水平方向に幅広く,かつ深い深度までの試料観察が必要となる.しかし,液状化が生じる場所は地下水位が高く,地盤も軟弱な泥層や緩い砂層や貝や礫を含む砂層が複雑に堆積するため,地下水位を低下させたのちトレンチを行う方法がとられてきた(風岡ほか,1989).東京湾岸埋立地は,人工地層の厚さが5mを超えるため,従来のトレンチでは掘削が困難である.そこで本調査ではACEライナーを改良し,新たに幅25cm×深さ9m×厚さ18cmの新ACEライナーを作製した.新ACEライナーはライナー背面に泥剤を送るシステムにより,ライナーの圧入および引き抜時の摩擦抵抗を減らし,ライナー先端に試料の落下を防ぐ装置を装備することにより,試料を乱さず採取することが出来るものとした.試料採取後に試料をライナーから取り出す際,人為的な試料の乱れが生じることから,防ぐ工夫をおこない,乱れの少ない試料を得た.さらに,調査箇所が学校校舎等構造物に隣接する狭所であったことから,ライナーの圧入・引抜にLHV工法を採用し,クレーン式バイブロ工法では困難な地層および狭い場所での作業を可能とした.3 調査結果調査地は東京湾岸低地の千葉市美浜区の公立高校の敷地内において,太平洋沖地震により地盤地表の変形がほとんど見られなかった箇所から40cm程度沈下した箇所を横断する2測線を設定した.調査は簡易貫入試験により予備調査を行った後,新ACEライナーを用いた地層断面調査を水平方向に3~5m間隔で計10箇所実施した.新ACEライナーを用いた掘削調査の結果,地表より深度約6~8mは人工地層,深度約6~8m以深は沖積層が確認された.人工地層は軟質な粘土質シルト層,ややゆるい細粒砂層,中粒砂層,貝殻や細礫を含む砂層,比較的硬い砂混じり貝殻密集層などで構成され層相変化が著しい.沖積層は締まったラミナの発達する中~細粒砂からなる.地下水位は地表より1.5mである.地層断面観察から,地表から深度約8mまでの内部構造(ラミナの変形・消失)を基に液状化-流動化部分の発生部もしくは非発生部を判定(風岡ほか,1994)した結果,液状化-流動化した部分は人工地層であり,中でも極細粒砂~中粒砂において液状化-流動化が認められた.さらにACEライナーにより採取した各はぎとり試料を用いて,地形面や層相との関係から現地にて各測線の地層対比の議論を行うことが出来た.4 新ACEライナーを用いた地層断面調査の利便性と今後の課題ACEライナーはジオスライサー(中田ほか,1997)と同様に,地表下8mまでの軟らかい粘性土やゆるい砂層,比較的硬い砂混じり貝殻密集層を掘削時に再液状化させることなく,定方位不攪乱試料で採取可能となった.一方,試料の落下を防ぐ装置が作動せず最下部の砂層が落ちることや掘削時に地表の盛土部が縮んでしまうこと,圧入時にライナーを斜めに入れたためゆるい砂層が脱水変形するなど一部発生したことから,今後の経験蓄積と技術更新によって改良が必要となる.